NatureやScienceに自分の論文を掲載させたいですか? Nature方式のキャプションを書くために1番重要な点を説明しました。
私の体感ですが、ほとんどの人がちゃんとできていません。
私が教わった事だけでなく、Nature Communicationsのエディタから受けたアドバイスも紹介しました。この記事は必読です!
キャプションの書き方は、意識して訓練しないと大間違いします。なぜなら、学生時代に教わるレポートのキャプションの書き方は、トップジャーナルにおいて極めて悪いキャプションの典型的な形だからです。
Nature式のキャプションは、まず最初に分かったこと(グラフで1番言いたいこと)を書き、それに続く文章はその言いたいことをサポートするための文章で、これだけは言っておかねばならない事を言い終わった瞬間にキャプションが終わるように書きます。
ちなみに一方で、学生のレポート構文では、横軸と縦軸は何で、どんなプロットなのか説明し、その後に考察を初めて、結論を書きます。つまり、学生のレポート構文では、最初の文からだけでは何をしたのか想像できず、最後までキャプションを読み終わった時に初めて言いたいことが分かります。何が言いたいか分かるまで時間がかかる文章なので、完成度が極めて低いキャプションといえます。
キャプションについて、私がNature Communicationsのエディターから受け取った文章をご覧ください。
Figure legends should begin with a brief title for the whole figure as the first sentence, then continue with a caption containing a short description of each panel and the symbols used. Please provide the missing title/caption for the figure.
よく説明できていると感心しました。要は、最初に簡潔にグラフをまとめるタイトルを書く。続いて、図の説明を短く書く、と言っています。
試しに次のグラフのキャプションを書いてみることで、どうやってキャプションを書くべきなのか解説します。
まず学生のレポート構文でキャプションから始めて、4ステップでNatureスタイルに改善していく過程を見せます。
グラフの説明: このグラフは物体を動かそうと力をかけると、ある特定の力でスリップが起きて、力が減少した結果です。このスリップを繰り返しているグラフです。スリップの幅Δが、バーガースベクトルという理論値と一致したので、結晶方向の滑り幅の観察に成功したと主張するグラフです。
さて、ではこのグラフのキャプションを書いてみましょう。
これが典型的な学生のレポート構文のキャプションです。
(1)グラフの説明を紫文字で書き、(2)結論に至った根拠の部分を緑文字で書き、(3)キャプションで1番言いたいことを青文字で書きました。
典型的な学生のレポートキャプションは、次の例のように(1)紫(2)緑(3)青の順で書かれます。
学生レポートキャプションを改善するステップ1として、「1番言いたいことを1番前に」置きましょう。
「本文の内容とキャプションの内容が重複しないようにすれば」、キャプションの内容を削れます。できるだけ文字数を少なくすることで、簡潔に説明するキャプションにします。
私は、本文は「グラフを得る方法や、グラフの結果が意味するもの」などを主に書く部分で、キャプションは「グラフそのものの説明」を主に書く部分と、ちゃんと役割を分けようと意識することで重複した内容を減らしています。
この場合、グラフの説明だけを残すように意識することで結論に至った根拠の部分を特に短くしました。
横軸は何で、縦軸は何かを説明する必要はありません。このように「図を見れば分かる事をわざわざ書かない」ことで、より簡潔なキャプションにしましょう。
この場合、グラフの説明の部分を特に短くしました。
(注意点1) ただ注意点として、図の中に小さな図がa、b、cと分けてある場合は、それぞれの図が何の図なのか順に説明しなくてはいけません。
(注意点2) もう1つの注意点として、もしグラフにエラーバーがある場合、そのエラーバーはどうやって計算されたのか説明する必要があります。もしくはSupplimental materialへのリンクをつける必要があります。
見れば分かることは削りつつ、見ても分からない事は必ず説明するキャプションにしましょう。
最後に、これから投稿する論文誌のフォーマットに合わせましょう。例えば、Natureの場合は、Fig.1|XXXXXX. XXXXXXXXXX.です。Scienceの場合は、Fig.1. XXXXXX. XXXXXXXXXXX.です。Nature Communicationsの場合は、Fig.1 XXXXXX. XXXXXXXXXX.です。ACS Nanoの場合は、Figure.1 XXXXXX. XXXXXXXXXX.です。
このようにNatureシリーズやScienceでは、最初の1番言いたいことの1文をboldで書きます。ACS Nanoでは全てがboldです。
自分が投稿する論文誌の論文を見て、キャプションの見た目を同じにしましょう。
あと投稿するとき、フォントはTimes New Romanにしておきましょう。
以上の4ステップを経て、学生のレポートキャプションが、Natureスタイルに変わりました。以下に完成度を比較してみて下さい。明らかに良いキャプションになったはずです。
「学生のレポート」構文では最初の文からだけでは何をしたのか想像できず、最後までキャプションを読み終わった時に初めて言いたいことが分かります。一方で、「Natureスタイル」構文では言いたいことがすぐ分かり、その後の内容が何となく想像しながら読めるのでより効率よく、より安心してキャプションを読めます。これが高品質のキャプションです。
キャプションでは、まず最初に分かったこと(1番言いたいこと)を書き、それに続く分は言いたいことをサポートするための文章で、これだけは言っておかねばならない事を言い終わった瞬間にキャプションが終わるのです。
私は4つのステップで改善するのをお勧めしています。
(1)言いたいことを1番前に書く
(2)本文との重複を避ける
(3)見れば分かることは書かない
(4)フォーマットを合わせる
の4点です。これで学生のレポートのようなキャプションから脱出して、最高品質のキャプションを書けますよ。
私はあなたのように研究をがんばり、よい論文を書きたいと思っているあなたのような科学者が好きです。私はあなたのような科学者を会いたくて、そしてそんな科学者が増えるよう、このwebサイトを立ち上げました。私がキャリアの序盤で知っていたかったなと思う高インパクトファクター論文の書き方を掲載しました。あなたが研究以外の部分で、私のように苦労しないように全力を尽くしました。もし私のように論文の書き方をちゃんと教わってこなかった方、ぜひ別の記事も参考にしてもらいたいです。これからもよろしくお願いします
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