Nature, Science, Cellといったトップジャーナルにふさわしいイントロの書き方、知りたいですか?
この記事で説明することは基本的な事ばかりです。けど私が見る限り、本当に多くの研究者が以下の基本をできていません。
しかもトップジャーナルを見ても、これら基本を無視したイントロはほとんど見ません。なので私が紹介するこの内容は、いわばトップジャーナルの極意といっていいと思っています。
(1)words数の計算,
(2)滑らかに絞る,
(3)書き始めの内容,
(4)具体的な問題点,
(5)何を発見したのか簡潔に,
の順で解説しました。これを読めば書き方が分かります。
書き方の前にイントロダクションの役割を説明します。
論文では...
(i)世界中には無数のトピックスがあり、その数あるトピックスの中からどうして自分の研究トピックスに注目すべきか説明し、
(ii)けれども誰にも解決できない問題がある背景を紹介し、
(iii)その問題を解決して自分は新たな発見をしたことを言います。
(iv)最後に、自分の出した成果の量は小さいが、これは後々広く社会に影響を与えていく重要な仕事であると言って論文が終わります。
このように論文とは、大きなトピックスから、小さな自分の結果に絞っていき、その結果は社会に大きな影響を与えるというように、“大小大” の構造を持つように書かねばいけません。
(i)(ii)がイントロに相当し、(iii)が結果と考察に相当し、(iv)が結論に相当します。
つまり(i),(ii)をどうやって書くのかがイントロダクションのコツになります。
まず最初にイントロダクションに何words使えるのか計算してください。
論文全体のwords数から計算します。全体の文字数を論文誌のガイドラインから確認できます。特に指定がないならfull articleだと4000 wordsくらいにしておけば無難です。
イントロダクションは論文全体の20%くらいにするとバランスがいいので、論文全体を4000 wordsとしたらイントラダクションに使えるwords数はだいたい600-800 wordsくらいが適切です。
イントロダクションは、(a)研究の背景と、(b)現在の問題と自分の成果、の2つで構成されます。(a)研究の背景は70-80%、(b)現在の問題と自分の成果の要約は20-30%がバランスがいいです。なので、(a)研究の背景に使えるwords数は430-640 words、(b)現在の問題と自分の成果の要約には120-240 wordsくらいになります。
以上のように、まず文章の量から決めましょう。文章量のバランスが個性的だと、エディタやレビューワからの印象が非常に悪いです。
イントロでの研究の背景では、まずエネルギー問題や環境問題といった誰もが関係のあるトピックスから書き始めて、徐々に小さな分野に絞っていき、最終的には自分の研究が重要であると言います。
例えば、[1.エネルギー問題]から初めて、[2.摩擦]の重要性を説明し、[3.表面の機械特性]といったように、大きな研究内容から徐々に具体的にしていき、最終的に自分の研究分野にフォーカスを合わせます。
これが基本です。
このとき滑らかに絞りましょう。つまり、途中までずっと一般的なことを話していたのに、突然自分の研究トピックスを話し始めないようにしましょう。また、最初から自分の研究内容の話を始めないようにしましょう。驚かせない範囲内で自分の研究内容に誘導しましょう。
このとき、words数に限りがあるので(430-640wordsが一般的)、このwords内で滑らかに研究内容を自分の内容に誘導する必要があります。
しかし、しばしば(2)で説明した基本は成り立ちません。論文誌によっては、必ずしも全員興味のある内容から書き始めなくてもいいからです。
例えば「顕微鏡」という論文誌があったとします。この雑誌の読者は顕微鏡のことをよく知っています。このためイントロの書き出しは、「なぜ顕微鏡は大切なのか」は書かなくてもよく、むしろ顕微鏡に詳しい人でも多分知らないだろうというギリギリの内容から書き始めるべきです。つまり読者(オーディエンス)がすでに持っている知識を想像し、どういった知識に興味があるのか意識して、イントロの書き出しを変える必要があります。
高いインパクトの論文誌ほど、より多くの読者の興味を引くために一般的な内容からの書き出しが求められます。にも関わらず、そういった高インパクトファクターの論文誌は、イントロのためにかける文字数を少なく設定しているため、効率よく一直線に自分の研究まで導かないといけません。トップジャーナルでは、多くに読者の関心を惹きながら、無駄のない文章、驚かせない論理で書かれているイントロが求められています。
次に、問題があるせいで研究が進まない背景を紹介します。
ここで具体的な問題を言わない研究者がいるので注意して欲しいです。私が過去に指導した人に「観察できないのが問題」と言った人がいるのですが、これではダメです。
「観察できない」ことはあなたの問題であって、論文の読者にとっての問題ではありません。
「観察できない」と言わずにもっと具体的に言いましょう。例えば「接触箇所を観察できないため、応力や歪みといった試料の寸法を知る必要がある物理量を得られないため、接点材料の機械的特性と摩擦係数の関係とを直接関連づけて考察できない問題がある」なんかはどうでしょうか。
これで具体的になりましたね。具体的に書くことで文章の説得力を強めるのがコツです。
ただ、あまりにも具体的に書きすぎるあまりに、読者の人数を減らさないようにしましょう。つまり、具体的に問題を言うことで論文の重要性を強調する工夫と、多くの人に興味を持ってもらう工夫のバランスを取るのに意識しましょう。
イントロの最後には、この論文での成果を率直に書きます。「何をしたのか」を書くだけではダメですよ「何を発見したのか」も書くのです。
まず何をしたのか書きます。Here, we…もしくは In this study, we…と書くといいと思います。
次に、何を発見したかを率直に言います。具体的には、We found that.....と書くといいと思います。
最後に、その結果が何を意味するのか書きます。具体的には、The result shows.....と書くといいと思います。以上でイントロを終わりにします。
優れた論文のイントロの後半を見ていると、Howeverなどの言葉が目に止まります。これは今から問題点を話しますという明確な合図です。そして、問題点を話し終えた後にすかさずHere,weもしくはIn this study, weと率直にこの論文で何をしたのか書いてあります。その後、We foundの後に発見した内容、とその発見が何を意味するのか端的に書いてあります。これが高インパクト論文のイントロの "型" です。必ず書けるようにしておきましょう。
多くの読者の興味を惹き、自分の研究に導く典型的な文章の構造を紹介しました。ポイントは以下の5つです…
(1)words数の計算,
(2)滑らかに絞る,
(3)書き始めの内容,
(4)具体的な問題点,
(5)何をしたのか簡潔に
で解説しました。
注意点として... (1)論文誌から読者を想定して、書き出しの内容を調整しないといけないのと、(2)問題は、できるだけ,できるだけ具体的に書くのと、(3)イントロの最後では何をやったかではなく、何を発見したのかもちゃんと書くことです。
どうでしょう?書き始められそうでしょうか?私はなかなか高インパクトの論文が書けず、とても苦しい思いを経験しました。なので、もしあなたが私と同じように悩んでいて、このwebサイトが前向きに頑張るためのヒントをあなたに与えられるならば、私は本当に本当に幸せです。私はあなたのように一生懸命な研究者を尊敬します。一緒にがんばっていきましょう
・次は結論の書き方です。結論を意識せずに、図や結果を書き始めないで欲しいからです。ぜひこの記事を見て下さい。
論文の結論の書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]