Natureシリーズなどのトップジャーナルの論文誌に原稿を投稿する際、カバーレターでどうやって自分の原稿の魅力を伝えるか知りたいですか?
トップジャーナルでは、ほぼ全ての原稿が、研究者にレビューされることなく1週間以内にエディタによってリジェクトされます。エディターキック(editor kick)とか、エディターリジェクト(editor reject)と呼ばれています。
このため、率直に原稿の魅力をエディタに主張できるカバーレターは、Nature, Science, Cellといったトップジャーナルから採択されるために超重要です。
この記事では、カバーレターで何を書くべきか詳細に解説しました。高難度の論文誌にチャレンジ方は必読の内容です。
カバーレターに書くべきは以下の5点です。
1. 原稿と一緒に何を提出したのか
2. 原稿には どんな魅力があるか
3. 査読者として相応しいと思う人のリスト
4. 査読者として相応しくない人のリスト
5. 共著者の情報
特に2が重要ですが、5つ全てを書く必要があります。この記事を読み終わるころには、何を書くべきか完全に分かるはずです。
また記事の最後にテンプレートを紹介するので、使用の検討をお願いします。
カバーレターにまず最初に書くべきことは、投稿した書類をエディターに伝えることです。
論文を投稿する際、論文誌のポータルサイトを経由していくつかのデータをエディターに投稿します。例えば、(1)原稿の本文、(2)カバーレター、(3)実験結果をサポートするデータなどです。
エディターとして絶対にやってはいけないのは、レビューワにデータを渡しそびれることです。
このため、論文のタイトル、著者のデータと、ポータルサイトにアップロードした全てのデータとが一致していることを確認できる内容をまず最初に書いてあげます。
書く内容は簡単です。具体的には以下のように書けばいいだけです。
On 月. 日, 年, we submitted our manuscript “論文のタイトル” authored by "全員の著者". ”提出物1”, ”提出物2”, "提出物3", and "提出物4" were submitted with the manuscript.
これは私がNature Communicationsに投稿したカバーレターの冒頭は以下です。これで問題ないです。
On Aug. 10, 2021, we submitted our manuscript “Ultrahigh Strength and Shear-Assisted Separation of Sliding Nanocontacts Studied in situ,” authored by Takaaki Sato, XXXXXXXXXX, XXXXXXXX and YYYYYYY. Supplementary Materials in the form of Supplementary Figures 1-15, Supplementary Discussion 1-3, and a Supplementary Movie were submitted with the manuscript.
手短に(0.5ページ程度で)原稿のインパクトを紹介しましょう。ここが一番重要な部分です。このとき、3つのパラグラフを書きましょう。
1つ目のパラグラフでは、「何を発見したか」書きます。何の現象を見たのか。どんな問題を解決したのか。その結果、どんな新しい科学的な発見があったのか説明します。Here we show ...やIn this study...など、自分が成し遂げたことを率直に言いましょう。読者に対して、どんなメッセージを届けるのか言うわけです。できるだけ「何をしたのか」書くのは抑えましょう。
2つ目のパラグラフでは、「何でこれが重要なのか」書きます。数あるトピックスの中からどうしてこの内容にフォーカスする必要があるか。どうして "今"、注目すべきなのか。原稿に書かれたメッセージが、どのような読者に、どんな驚きを与えるのか言います。
3つ目のパラグラフでは、「何でこのジャーナルにふさわしいか」書きます。フォーカスがこれに合っていることを説明します。さらに、自分の結果が "最高品質" であることを説明します。"最高品質" とは、何百年も未解決だった人類の疑問を解決したとか、世界中の人の行動を変える新しい判断基準を提案したとか、新しい産業を生み出すといった、影響が極めて大きいことです。
以上を0.5ページくらいで手短に書きましょう。ここで絶対に注意して欲しいのは、原稿に書いてある文章と同じ文章をカバーレターに絶対に書いてはいけません。エディタにとって同じ文章を2度読まされることになり、完成度が低いと思わせるので非常に悪印象です。トップジャーナルだと即リジェクトの危険があると思ってほしいです。
稀な例ですが、1つ目のパラグラフと2つ目のパラグラフを逆にして書いてもいいです。
エディタの大きな仕事の1つとして、レビューワを決めることです。大した経験のない人に査読をお願いしても査読の質が担保できないためエディタにとって嬉しくないので、十分に実力のある先生 (世界的な権威であり、Nature, Science, Cellといった論文に投稿経験があり、査読経験もある先生) を提案しましょう。
これらの先生はあなたの研究内容をある程度知っていて、今回の原稿についても事前に少しは説明していると良いと思います。査読者は10人くらいは提案しましょう。このとき日本人を提案するのは、査読者として自分の友達を提案されたとエディタに思われるのでやめましょう。
提案するのは名前だけでなく、役職、所属、メールアドレスも書きましょう。エディタの仕事をできるだけ減らすことを意識しましょう。
* インパクトファクターが5未満の低難易度に分類される論文において、世界的な権威のある先生を提案する必要はなく、提案するのも5人程度で十分です。世界的権威を10人紹介するのは、トップジャーナルに投稿する場合だけです。
具体的には、以下のように書きます。
We recommend these knowledgeable experts as possible referees:
Prof. ”名前1”, ”所属機関1”, ”メールアドレス1”.
Dr. ”名前2”, ”所属機関2”, ”メールアドレス2”.
Prof. ”名前3”, ”所属機関3”, ”メールアドレス3”.
:
Prof. ”名前10”, ”所属機関10”, ”メールアドレス10”.
あなたの仕事にいつも批判的な人はいるはずです。ろくに根拠もあげずにリジェクトしてくる人です。根拠なく否定する人を必ず取り除きましょう。
ただ、取り除けるのは3人くらいまでだと思って下さい。あまり多すぎても悪印象だと思います。
具体的には、以下のように書きます。
Finally, we respectfully request that you exclude "査読者にしてほしくない人1" and "査読者にしてほしくない人2" as referees, since they have exhibited bias against our work in the past.
ちなみに、こうした海外の人の知り合いがほとんどいない場合、Gordon Research Conferenceという最高にいい学会があるので、この学会で気の合う人と、気の合わない人を見つけておくのはどうでしょうか?この記事で紹介しました。
最高にオススメな学会:Gordon Research Conference
最後に全員の著者の情報を順々に書きます。ORCiDをのせると良いと思います。エディタは著者たちの素性を調べる場合があります。高インパクトの論文に定期的に出版できているか? ハゲタカ論文ばかりに投稿していないか? などをチェックして研究者のキャリアを確認する場合があるそうです。Natureシリーズに10本以上採択されていたり、h指数は200を超えている研究者が著者にいると印象がよしです。
名前, 大学,
Phone: XXXXXXX
メールアドレス
以上の内容を読めばカバーレターは書けると思います。
ただ、1)もっと効率よく書きたい方、2)絶対に要点を取りこぼしなく完成させたい方、3)今よりもう一つ上のランクの論文誌を目指したい方は、ぜひこの解説つきのテンプレートのご使用を検討して頂きたいです。
Nature Communicationsに採択された時のカバーレターのテンプレートもつけてあります。使って下さい。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
世界のトップ大学では、論文の書き方のノウハウを簡単に学べ、どんどんトップジャーナルにチャレンジしています。
私は運良く学ぶ機会があったので、その内容をこのwebサイトに書きました。
英語が母国語でないことが問題なのではありません。書き方を学ぶ機会がないことが問題なのです。
このwebサイトの別の記事も参考にして、ぜひライバル達を出し抜ける知識をつけてほしいです。
トップジャーナルでは、ほぼ全ての原稿が研究者にレビューされるまでもなく、1週間以内にエディタによってリジェクトされます。
たとえ何億円かけた研究だったとしても、たとえ10年以上かけた研究だったとしても関係ありません。ほぼ全ての原稿がエディタによって投稿から1週間以内にリジェクトされます。
率直に原稿の魅力をアピールできるカバーレターは、高インパクトファクターになるほど重要になるわけです。
カバーレターでは...
1. 原稿と一緒に何を提出したのか
2. 原稿は、何が新しいのか、どんな波及効果があるか
3. 査読者として相応しいと思う人のリスト
4. 査読者として相応しくない人のリスト
5. 共著者の情報
特に2の部分が重要です。原稿の結果の魅力を率直に書きましょう。「何を発見したか」「何でこれが重要なのか」「何でこのジャーナルにふさわしいか」を0.5ページくらいで書けばいいです。
わざわざwebサイトを見てまで良い論文を書きたいと思う、あなたのような研究者が私は大好きです。このサイトでは、常に上を目指すあなたを一生懸命に応援していきます!!
・採択されるには「レブッタルレター」というのも出さないといけません。ただ安心してください。型があるので、ちゃんと勉強すればトップジャーナルに通用するレターをかけるようになれます。この記事を見て下さい。
論文のレブッタルレターの書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]