NatureやScienceなどのトップジャーナルの査読で、レビューワからアクセプトをもらいたいですか?
レビューワを説得するための書類であるリバッタルレターをどう書くのか、テンプレと共に紹介しました。
高インパクトファクターの論文誌にチャレンジする方、必読の内容です。
レビューワコメントを受け取った際、原稿を修正するだけでなく、質問に対して応答や反論をする書類を提出します。この書類をリバッタルレター(rebuttal letter)とか、ポイント トゥー ポイント レスポンスレター(point to point response letter)と言います。
良いリバッタルレターを書くには、良い研究結果を得るのが第一です。それについて今回アドバイスしません。
しかし「個性的な形式」や、「不誠実な表現」のリバッタルレータを投稿すると、せっかく研究結果が良くても悪印象に伝わります。(a)雰囲気を良くする典型的な返答、(b)相手の意見を否定せず自分の意見を言う典型的な返答、(c)修正依頼に対する感じのいい返答、をしましょう。
この記事ではリバッタルレターの典型的な形式と、典型的な感じのいい返答表現を紹介します。
リバッタルレターは、リプライコメントから作ります。
リプライコメントとは、それぞれのレビューワが出したコメントを、エディターがまとめたものです。
ちなみに、査読のどの段階でリプライコメントは受け取るのか知りたい方は、この記事を見て下さい。
論文が採択されるまで何をするか?
リプライコメントは最初に総評と、その後に質問、批判、修正依頼などのコメントが箇条書きの形式で送られてきます。
総評ではレビューワが、(a)あなたの論文で何をやったかまとめます。次に(b)何が新しいか、どんな波及効果が期待できるかといった意見が書かれ、最後に(c)原稿が採択に相応しいのか、現段階でふさわしくないならどこを修正すべきかを説明します。
その後、質問、批判、修正依頼などが、箇条書きの形式で書いてあります。
それぞれのレビューワが総評を言い、その後にコメントを書きます。なので、レビューワの数だけ総評とコメントが渡されます。
レビューワ1の1つだけ取り上げて説明します。実際にリブッタルレターを作成する際には、同様の作業をレビューワ2、レビューワ3についてもやります。
最初に”Point to Point Response to the Reviewers”と書き、その下に原稿のIDを書きます(図ではIDはNCookings-22-12345Aとしました)。
まず感謝の言葉を書きます。以下の文をコピペしてください。フォントは赤にして下さい。要は「原稿を査読してくれてありがとう。言われた通り原稿を修正しましたよ。原稿の修正箇所はハイライトでわかりやすくしました。以下の文では、レビューワからの質問とその答えを書きました。」といった内容です。
We sincerely appreciate the editor and reviewers’ valuable and insightful comments on our manuscript. We have revised and improved our manuscript as suggested. In the following, we provide a point-to-point response to every question raised. We have highlighted portions of the manuscript that have been updated in response to the reviewers’ comments.
レビューワからのコメントをそのままコピーします。レビューワからのコメントのフォントの色は黒です。一方で自分のコメントは全て赤にして下さい。黒と赤を分けるのは、どれがレビューワのコメントでどれが著者のコメントなのか一瞬で判別できるようにするためです。
もう一つ注意しなくてはならないことは、レビューワのコメントを必ず全てをコピーすると言うことです。一部の文章を削って、レビューワが過去に何もコメントをしていないように書くのは絶対ダメです。総評も含めて必ず全てをコピーして下さい。
総評の下に、総評に対する返答をします(赤いフォントで)。注意すべき点は、「ポジティブな表現を使うべき」です。最初の1文が攻撃的だと、レブッタルレター自体が悪印象になります。
総評への返答はこのコピペで十分です。Response: We thank the reviewer for these very positive comments on the work.
もし総評でポジティブなコメントばかりでなく、「この原稿は本当にこの論文誌にふさわしいのかと疑っている」といったような強く否定するネガティブなコメントが総評に入っていたとしたら、少し単語を足しましょう。どうにかしてできるだけ良い雰囲気のコメントを返すわけです。例えば...Response: We thank the reviewer for positive comments and their valuable feedback.とかResponse: We thank the reviewer for positive comments and the insightful feedback.がいいでしょう。例え批判的な総評であっても、原稿をよくしようとしてくれてありがとうと言います。
間違えても、We authors do not agree with those comment because.... やWe thank the reviewer for the comments, however...といった強くレビューワのコメント内容を否定しようとする表現は絶対に避けましょう。
論文の主張に関する科学的な議論をする際の言い方を紹介します。レビューワからの意見に対してただ修正した内容を返答するのは不誠実です。
(1)レビューに感謝(thank)し、
(2)レビューワの意見に同意(agree)し、
(3)何が最適でないのか(何がnot appropriateか)自分の考えを説明し、
(4)その上で何を修正(modify)したのか言い、
(5)どこを直したのかわかるようにhighlightedされた箇所を指定します。
以上の5つのステップを必ず踏んで返答して下さい。5つのステップで返答した典型的な表現を2つ以下に紹介します。
Response: We thank the reviewer for these comments. We completely agree that since AAAAA, BBBBB is not appropriate to describe the CCCCC. DDDDD. We modified that EEEEE. These changes are highlighted and found on page FFFFF in the revised manuscript.
ほぼ同じですが、こんな言い方もできます。
Response: We thank the reviewer for these comments. We fully agree that we should have considered AAAAA. BBBBB is not appropriate to describe the CCCCC. GGGGG showed DDDDD. We therefore modified that EEEEE. These changes are highlighted and found on page FFFFF in the revised manuscript.
DDDDDの結果(とその著者GGGGG)を知っているのかは、その研究者の実力です。典型的な表現を覚えた後に、研究に関する勉強をすればいいだけです。
レビューワからよくあるコメントは、参考文献を追加するべきだといった指摘です。おそらく、レビューワやレビューワの知り合いを参照して欲しいのだと思います。テンプレがあるので簡単です。以下をコピペして下さい。
・引用すべき論文を1つだけ紹介された場合...
Response: We greatly appreciate the reviewer pointing out the existence of this result and the related literature, which has been very helpful.
・いくつも引用すべき論文を提案された場合...(XXXXとYYYYYとZZZZZには引用文献を代入)
Response: We thank the reviewer for pointing out this issue and providing a comprehensive set of references. We were not aware of all of these advances. Note, as mentioned above, we intended to cite XXXXX, and also cited YYYYY and ZZZZZ.
Due to the strict limitations of the journal, we cannot include all these references in the main text. We have put the ones we deem to most relevant in the main text as we find these papers to be of very high quality and well worth citing and (briefly, due to space limits) discussing.
時制が間違っている、単純な単語のスペルミス、誤った冠詞を書く、誤った前置詞を使う、単位が間違えている、などなどの修正依頼です。以下のように素直に認めて修正しましょう。
・ミスが1つの場合、以下のように言っていいです。Response: The referee is correct; this was an error. We thank the referee for pointing it out. We have corrected it.
・複数の場合、以下のように言います。Response: We thank the reviewer for their careful review. We have corrected all of these errors, and reviewed the manuscript fully.
ちなみに、これが私がNature Communicationsに投稿したRebuttal letterです。このようにNature Communicationsは、レビューワとのやり取りをこのように公開しています。次のリンクから見れます。
レブッタルレターはリプライコメントから作ります
リプライコメントを黒、自分のコメントを赤にして書きます。このとき、リプライコメントを完全にコピーします。削ったり足したりしてはいけません。
タイトルと原稿のIDを書類の1番上に書きます
次にエディタとレビューワに対してレビューを感謝する言葉を書きます
レビューワの総評に対して感謝する言葉を書きます
議論を持ちかける質問をされた場合、「感謝 / 同意 / 考え / 修正 / 修正箇所の紹介」の順で書きます。
引用論文を紹介された場合は典型的な言い方で返します。ミスを指摘された場合も、典型的な言い方で返します。
どうでしょう、典型的な表現でほとんどの部分を返せることがわかって頂けたと思います。ぜひ個性的なレブッタルレターでなく、典型的な構造と、典型的な表現を使うことで、レビューワやエディタを変に驚かせないレターを書きましょう。
自分を代表する研究成果が出ない時期が本当に辛くて、そして同じように苦しんでいる人が他人には全然思えなくて、どうにか助けになりたいという思いからこのwebサイトを作りました。私は、わざわざ勉強してまでいい成果を出したいという、あなたのような研究者が好きです。私はあなたに「今まで研究をがんばってきてよかった」と言わせたいんです
・リバッタルレターを実例を使って解説した記事があります。これも読めばで完璧です。
論文のリバッタルレターの書き方(実例編): Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]