NatureやScienceなどのトップジャーナルの査読で、レビューワからアクセプトをもらいたいですか?
レビューワを説得するための書類であるレブッタルレターをどう書くのか、テンプレと共に紹介しました。
Nature誌などにチャレンジするには必須です!
この記事では、レブッタルレターの書き方のみにフォーカスしました。論文のタイトル, 序論, カバーレター...といった、他の部分の書き方について網羅的に知りたい人は、まとめ記事 [論文の書き方: インパクトの作り方, 序論から結論まで, 全部!]を参考にしてください。
レビューワコメントを受け取った際、原稿を修正するだけでなく質問に対して応答や反論をする書類を提出します。この書類をレブッタルレターと言います。
良いレブッタルレターを書くには、良い研究結果を得るのが第一です。それについて今回アドバイスしません。ただ、レブッタルレターには多くのテンプレがあるのでけっこう簡単に書けます。雰囲気を良くするテンプレな返答、相手の意見を否定せず自分の意見を言うテンプレな返答、修正依頼に対する感じのいい対応のテンプレなど、この記事では様々なテンプレを紹介します。
Nature, Science, Cellなど高インパクトファクターの論文にチャレンジする前に勉強しておきましょう!
レブッタルレターは、まず受け取ったリプライコメントから作ります。
レディタから受け取ったリプライコメントは、レビューワそれぞれが出したコメントをまとめたものです。
リプライコメントは論文投稿でどの段階で受け取るかは[過去の記事]を参考にして下さい。
この記事では説明の便宜上、レビューワ1の1つだけ取り上げて説明します。実際にリブッタルレターを作成する際には、同様の作業をレビューワ2、レビューワ3についてもやります。
レビューワのコメントはまず、(a)あなたの論文で何をやったのかまとめています。次に(b)何が新しいか、どんな波及効果が期待できるかといった意見が書かれ、(c)最後に論文の採択に相応しいのか、現段階でふさわしくないならどこを修正すべきかを説明します。これら総評が終わったら、質問、批判、修正依頼などが書いてあります。
(3-a) タイトル作成: この書類がリブッタルレターであることを書きます。
(3-b) 色分け: レビューワからのコメントを全て赤にし、あなたの返答を全て黒で描きます。その理由は、どれが質問でどれが返答なのか瞬間的にわかるようにするためです。
(3-c) 総評に対するコメント: レビューワに対して感謝をいいます。
(3-d) 質問、批判、修正依頼に対するコメント: 1つ1つ答えていきます。研究の内容の部分はアドバイスできませんが、言い方などテンプレな部分をここで紹介します。
これら(3-a)、(3-b)、(3-c)、(3-d)をすればレブッタルレターの完成です。これらを順々に説明します。
最初に”Point to Point Response to the Reviewers”と書き、その下に原稿のIDを書きます(図ではIDはNCookings-22-12345Aとしました)。
次に以下の文をコピペしてください。フォントは赤にして下さい。これはテンプレです。要は「原稿を査読してくれてありがとう。言われた通り原稿を修正しましたよ。原稿の修正箇所はハイライトでわかりやすくしました。以下の文では、レビューワからの質問とその答えを書きました。」といった内容です。
We sincerely appreciate the editor and reviewers’ valuable and insightful comments on our manuscript. We have revised and improved our manuscript as suggested. In the following, we provide a point-to-point response to every question raised. We have highlighted portions of the manuscript that have been updated in response to the reviewers’ comments.
レビューワからのコメントをそのままコピーします。レビューワからのコメントのフォントの色は黒です。一方で自分のコメントは全て赤にして下さい。黒と赤を分けるのは、どれがレビューワのコメントでどれが著者のコメントなのか一瞬で判別できるようにするためです。
もう一つ注意しなくてはならないことは、レビューワのコメントを必ず全てをコピーすると言うことです。一部の文章を削って、レビューワが過去に何もコメントをしていないように書くのは絶対ダメです。もちろん、新たに黒のフォントで書き足して、レビューワが以前にそんなコメントをしたようにでっち上げるのも絶対ダメです。総評も含めて必ず完璧にコピーして下さい。
総評(質問や意見の前に書かれている文章のこと)では、あなたの原稿では何をしたのか、何が新しいと思ったのか、この論文誌に出版するのが相応しいと思うのかというのが率直に書いてあります。
総評の下にあなたはその総評に対して返答をします(赤いフォントで)。ここで注意すべき点は、この返答はポジティブな文章にしましょう。レビューワやエディタはまず最初にこの文を読みます。最初の1文が殺伐としていると、このレブッタルレター自体が殺伐とした印象を与えてしまいます。
具体的に紹介します。これのコピペで十分です。総評に対してはこれだけでいいです。Response: We thank the reviewer for these very positive comments on the work.
ただ、もし総評でポジティブなコメントばかりでなく、「この原稿は本当にこの論文誌にふさわしいのかと疑っている」といったような強く否定するネガティブなコメントが総評に入っていたとしたら、少し単語を足しましょう。以下のようにどうにかしてできるだけ良い雰囲気のコメントを返すわけです。例えば...Response: We thank the reviewer for positive comments and their valuable feedback.とかResponse: We thank the reviewer for positive comments and the insightful feedback.とか言っておきましょう。批判的なコメントであっても、原稿をよくしようとしてくれてありがとうと言います。
間違えても、We authors do not agree with those comment because.... やWe thank the reviewer for the comments, however...といった強くレビューワのコメント内容を否定しようとする表現は絶対に避けましょう。
テンプレがあるので簡単です。以下をコピペして下さい。
・引用すべき論文を1つだけ紹介された場合...
Response: We greatly appreciate the reviewer pointing out the existence of this result and the related literature, which has been very helpful.
・いくつも引用すべき論文を提案された場合...(XXXXとYYYYYとZZZZZには引用文献を代入)
Response: We thank the reviewer for pointing out this issue and providing a comprehensive set of references. We were not aware of all of these advances. Note, as mentioned above, we intended to cite XXXXX, and also cited YYYYY and ZZZZZ.
Due to the strict limitations of the journal, we cannot include all these references in the main text. We have put the ones we deem to most relevant in the main text as we find these papers to be of very high quality and well worth citing and (briefly, due to space limits) discussing.
時制が間違っている、単純な単語のスペルミス、誤った冠詞を書く、誤った前置詞を使うなどなどの修正依頼です。以下のように素直に認めて修正しましょう。
・ミスが1つの場合、以下のように言っていいです。Response: The referee is correct; this was an error. We thank the referee for pointing it out. We have corrected it.
・複数の場合、以下のように言います。Response: We thank the reviewer for their careful review. We have corrected all of these errors, and reviewed the manuscript fully.
これも(3-d-2)と同様です。レフェリーが正しかったです。修正しますと返します。
(* 英文法のミスではなくて科学に関するミスをレビューワが見つけると、レビューワはこの原稿を掲載して大丈夫なのだろうかと疑念を持ちだします。原稿の採択に慎重になり、質問が攻撃的になるなど、レビューワが "堅く”なります。できれば原稿の投稿前にミスは無くしておきましょう)
Response: We thank the reviewer for these comments. We completely agree that since AAAAA, BBBBB is not appropriate to describe the CCCCC. DDDDD. We modified that EEEEE. These changes are highlighted and found on page FFFFF in the revised manuscript.
ほぼ同じですが、こんなテンプレもあります。
Response: We thank the reviewer for these comments. We fully agree that we should have considered AAAAA. BBBBB is not appropriate to describe the CCCCC. GGGGG showed DDDDD. We therefore modified that EEEEE. These changes are highlighted and found on page FFFFF in the revised manuscript.
議論の最中で実際にDDDDDの結果(その著者GGGGG)を知っているのかは、その研究者の実力の部分になります。勉強して力をつけましょう。テンプレを覚えた後は、努力すればいいだけです。
このように、レビューワからの意見に対してただ修正した内容を返答するのは不十分です。まず(1)レビューに感謝(thank)し、(2)レビューワの意見に同意(agree)し、(3)何が最適でないのか(何がnot appropriateか)自分の考えを説明し、(4)その上で何を修正(modify)したのか言い、最後に(5)どこを直したのかわかるようにhighlightedされた箇所を紹介します。
レブッタルレターはリプライコメントから作ります
リプライコメントを黒、自分のコメントを赤にして書きます
リプライコメントを完全にコピーします。削ったり足したりしてはいけません
タイトルと原稿のIDを書類の1番上に書きます
次にエディタとレビューワに対してレビューを感謝する言葉を書きます
レビューワの総評に対して感謝する言葉をポジティブな表現で書きます
引用論文を紹介された場合にはテンプレがあります
ミスを指摘された場合もテンプレがあります
議論を持ちかける質問をされた場合もテンプレがあります。感謝 / 同意 / 考え / 修正 / 修正箇所の紹介の順です。
ではGood Luck!
・論文についてあまり勉強していなくても、テンプレさえあれば割と形になります。論文の書き方について、効率的に知りたい方はこの記事を参考にしてもらいたいです。 [論文のテンプレがどうして超重要なのか?]
・Nature論文を書きたいですか? 書き方を説明したまとめ記事があります。書く実力をつけたい方は、ぜひ参考にしてもらいたいです。[論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道]
以上です!
本の宣伝: 科学技術の基礎の全てをカバーしながら、その応用についても紹介してあり、しかも1年くらいで全部読み終えられるちょうどいい本はないだろうかと長年思っていた。東京大学を首席で卒業し、Nature Communicationsに論文が採択され、アメリカ空軍研究所と共同研究した経歴があり、さらに大型コンピュータの研究開発に携わるなど、様々な国や機関で活躍してきた著者が書いた「科学技術の全般を理解できる本」発売中!