学術論文を掲載させたいですか? 投稿から採択までの工程を徹底的に説明しました。
これから論文を書く学生の方、Nature系やScience系などに投稿する研究者の方、全ての研究者に必須の内容です。
ちなみに「論文とは何か」といった基本を知りたい方、この記事を見て下さい。
論文とは何? 論文誌って? 査読って? 論文の基礎
論文誌のwebサイトに、原稿とカバーレター(自己推薦書のようのもの)、必要ならば実験の動画や実験データなどのサプリメンタルデータを投稿するだけです。
ちなみにNature, Science, Cellなどは、80-90%がこのタイミングでリジェクトされます。要は「門前払い」です。このため高インパクトの論文誌では、論文の価値を率直に主張できるカバーレターが極めて重要になります。
カバーレターの "解説付きテンプレート" が気になる方、この記事をチェックして下さい。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
エディタは原稿とカバーレターとデータを著者から受け取り、原稿を査読に進めるべきか判断します。
不採択になると、原稿が論文誌に載ることはありません。これで終了です。
エディターによってこのタイミングで不採用が判断されるのを通称エディターキック(editor kick)とかエディターリジェクト(editor reject)と呼ばれています。投稿からエディターキックまでの期間は雑誌によって異なりますが5〜10日です。つまり投稿から14日経ってもまだエディターキックされていないってことは、エディターキックされていないと考えていいです。
個人的な意見なのですが、エディタは文の構成や文字数など基本的な部分をざっと確認するだけだと思います。過去に私がある原稿をリビューした時に、アブストラクトの内容の半分が結論にコピペされていたのにも関わらず、エディタは私に原稿を渡してきました。なので典型的な論文でエディタはこの段階ではほとんどリジェクトしないです
エディタはレビューワを探し、
レビューワに原稿のレビューをお願いします。
ちなみにエディタは編集者で、レビューワは教授や研究員などプロの研究者です。レビューワは通常は2人で、2〜4人の場合もあります
レビューワが原稿をレビューします。結論の妥当性、実験の新規性、結果の新規性、波及効果の強さなどをチェックします。
それぞれのレビューワは、原稿の総評と質問を書いてエディタに渡します。
レビュー期間の長さは論文誌によって異なりますが、だいたい1〜1.5ヶ月です。
エディタはレビューワのコメントを見て、以下のa,b,cのどれかを判断します。エディタはレビューワからの結果をつなげてリプライコメント(reply comment)という書類を作成して著者に渡します。
a.リジェクト、b.メジャーリビジョン (major revision)、c. マイナーリビジョン (minor revision)
レビュー終了です。論文誌に原稿が掲載されることはありません。研究者がよく"論文がリジェクトされた"と話すのは、このタイミングのリジェクトのことです。
リプライコメントには、論文の主張の一部が変わるかもしれない修正依頼か質問を含まれています。このためレビューワは質問の返答が、明確なものでなかったらレビューワは原稿をリジェクトします。
修正点がほとんどなく、ミスを直すだけの修正依頼です。マイナーリビジョンまで辿り着ければ、ほぼリジェクトされることはありません。
最初のレビュー結果でメジャーリビジョンを飛ばしして、いきなりマイナーリビジョンになることは聞いたことがありません。しかし過去に、英文法のミスや、変数の定義を変える提案を受けたり、引用すべき論文を提案されるだけのメジャーリビジョンを受けた経験があります。修正依頼の内容としては間違いなくマイナーリビジョンなのですが、名目はメジャーリビジョンになっているということならありえます
原稿の著者は、エディタから受け取ったリプライコメントに書かれた質問に答えたり異論に反論したりして、リバッタルレター(rebuttal letter)を作成します。それに伴って原稿を修正します。
修正された原稿とリバッタルレターをエディタに提出します。修正された原稿とリバッタルレターには、特に提出期限はありません。多くの論文誌は6ヶ月を一応の提出期限に設定してあることが多いですが、提出期限の延長をエディタにお願いすれば簡単に延長できます。
リバッタルレターの書き方を知りたい方、この記事を見て下さい。
論文のリバッタルレターの書き方: Nature, Science, Cellへの道
エディタが、修正された原稿とリバッタルレターをレビューワに渡します。
レビューワは2週間くらいでそれに返答します。レビューワは提出期限を延長できますがあまりしません。
修正された原稿とリバッタルレターをエディタに提出します。
(ちなみにレビューワはリバッタルレターはそのまま受け取るので、レビューワは自分以外のレビューワがどんな質問をしたのかを見れます)
レビュー終了です。論文誌に原稿が掲載されることはありません。
[5.返答]に戻されます。もう一度レビューワーレビューをする必要があり、原稿の採択が最低でも1ヶ月は遅れます。
論文の主張が変わらない範囲だけの修正依頼になります。英文法のミスや、引用論文の番号が間違えていた程度です。著者は再度修正された原稿をエディタに送ります。レビューワの役割は終えました。レビューワはエディタから査読に参加したことのお礼を言われ、査読プロセスから退出します。
マイナーリビジョンからの返答で、指摘されたミスを修正されているとエディタが判断した場合、エディタは原稿を採択(アクセプト, accept)します。マイナーリビジョンまで行けば、原稿がリジェクトされることはほとんどありません。
エディタはオーサーに原稿が論文誌にアクセプトされたと伝えます。エディタは再度修正された原稿から、図の位置やサイズ、文字のフォントなどなどの論文のデザインを決めて草案(プリプルーフ, pre-proof)を作成します。
オーサーにプリプルーフを見せて、オーサーから最終許可を得ます。オーサーから許可を得られれば、原稿を論文として論文誌に掲載します。プリプルーフからパブリッシュまで1ヶ月くらいかかります。以上になります。
どうですか、参考になりましたか? 論文をどんどん書いていきましょう。このサイトでは、常に上を目指す研究者を一生懸命に応援していきます!!
・Nature論文はその他の論文と違って、リジェクトされる可能性が高かったり、時間がかかります。いつリジェクトされるのか、どの工程で時間がかかるのか徹底的に比較しました。
Nature論文とそうでない論文、採択まで何が違う?
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]