Nature論文書きたいですか? Nature系の論文にチャレンジしたときに何が起きるか事前に知っておきたいですか?
私が体験したNatureシリーズとそれ以外の論文との違いを紹介します。
これから高難度の論文採択を目指す方、トップジャーナルにチャレンジするときに何が起こるか事前に知っておきましょう。
ざっと言うとNatureシリーズは何が違うのか?
(1) エディタが積極的に論文の価値を判断します
(2) レビューワが世界的に権威のある先生です
(3) アクセプト以降に多数の修正があります
(4) 査読期間がとても長い
以上の4点から、ネイチャー掲載はすごい大変です。これらを順々に説明します。
Natureシリーズでは80-90%程度の原稿が投稿されると、エディタによってリジェクトされます。(一方、典型的な論文ではエディタでリジェクトされるケースは極めてまれです)。これをエディターリジェクトとか、エディターキックと呼ばれています。
論文が出版されるまでの査読は非常に長く、メジャーリビジョンやマイナーリビジョンなど様々な過程をふみます。エディターリジェクトとは、この長い査読過程に入ることなく、最初の段階で終了するわけです。
少し強い言い方をすると「門前払い」ということです。エディターキックされた場合、投稿から7-10日でリジェクトされます。一度リジェクトされると、2度とその原稿をその論文誌に投稿できません。
このためNature, Science, Cellといったトップジャーナルにおいて、論文の価値を率直に主張できるカバーレターが、極めて重要になります。
レビューワ レビュでさらに80-90%程度の原稿がリジェクトされます。リジェクトされないようにするための一番のコツは、もちろん良い研究結果を書くことなのですが、そのほかにもa, bの2つの工夫ができます。
a) リバッタルレター:レビューワの指摘に対する返答内容を書いた書類をリバッタルレターと言います。リバッタルレターでレビューワから指摘された質問にちゃんと答えられているのかが、採択を得るのに重要です。
ちなみにリバッタルレターの書き方には、テンプレがあるのでそれを大きく外れなければわりと良く書けます。レブッタルレターの雰囲気を良くするテンプレな返答、相手の意見を否定せず自分の意見を言うテンプレな返答、修正依頼に対する感じのいい対応など、書き方が気になる方、この記事を見て下さい。
論文のリバッタルレターの書き方: Nature, Science, Cellへの道
b) 全ての成果に対して否定的な態度をとる研究者をレビューワに入れない:論文の査読結果の総評部分で、新規性がないと主張してリジェクトしようとしている査読結果を見ました。しかしそれに続く質問部分は、基礎的な質問ばかりでした。論文の内容を何も理解していないのに、気に入らないからリジェクトしているようにしか見えませんでした。こうゆう何をしても否定的な人は世界中に無数にいます。もしかしたら自分達とライバル関係にあるのかもしれませんね。いずれにしても、事前にこうゆう人を査読者の候補から外す必要があります。カバーレターで査読者リストから取り除くように指示できるので、原稿投稿前にちゃんと削除しておきましょう。
エディタ審査で80%程度がリジェクト、レビューワ審査で80%程度がリジェクトというのは、私や友人の体験談をまとめた上での予想値です。
しかし、論文採択率は公表されていて、Nature Communicationsの採択率は7%です。なのでエディタで80%リジェクト、レビューワで80%リジェクトという数字はあながち遠い値ではないと思います。採択率が低いから論文の内容に信憑性が高いとは言い切れませんが、すごい大変な作業だと分かります。
ちなみに過去の記事で採択率を有名論文誌ごとに紹介したので、採択率が気になる方はこの記事を見て下さい。
論文の採択率を知りたい!
レビューワからアクセプトを終えた後、典型的な論文とは異なり、エディタはすぐにAcceptedと言いません。かわりにAccepted in principleと言います。要は”原則的にアクセプト”と言っておき、リジェクトできる余白を残しておくわけです。
その後、エディタから数ページにわたって大量の修正依頼がきます。図を編集可能なベクトルデータにしてほしいとか、利益相反に関する宣言や、データの保管場所を指示するなどなどです。
それらが終わるとFormally accepted (=正式にアクセプト)とエディタから言われます。これでアクセプトです。
私はAccepted in principleを得ながらも、Formally acceptedに行けず、エディタからリジェクトされた例を1件知っています。必ずエディタからの修正依頼に対して真摯に答えてください。
私の書いたNature Communications論文を例して比較してみます。注意しなくてはいけないのは、これは私の原稿の場合の話で、いつもこのスケジュールで原稿が採択されるわけではない点に注意してほしいです。
比較してみると、Sensors and Actuatorは投稿から完成まで93日だったのに対して、Nature Communicationsはほぼ2倍の171日です。
Nature論文はとても時間がかかります。しかしNatureが運営する原稿投稿のためのポータルサイトであるManuscript Tracking SystemはEditor assigned, manuscript consideration... など、より詳細な進捗が逐一表示されるので、たとえ時間がかかっても多少は安心します。ちなみに、これがManuscript Tracking Systemから分かった私の原稿のスケジュールです。
スケジュールを比較した結果をまとめると
(1)投稿してからリプライコメントを受けるまでの期間はほぼ同じ。
(2)リバッタルレターを出すと、Nature Commの場合はリバッタルレターを受け取ってからエディタが2週間考えてからレビューワに修正された原稿とリバッタルレターを渡す。
(3)Accepted in principleとFormally acceptedがあり、Accepted in principleとFormally acceptedの間に、エディタが3週間くらい原稿の質を向上するために何をするべきか考える。
(4)レビューワからの質問がキツイので、リバッタルレターを書くために多くの日にちが必要になりがち(私の場合は、Sensors and Actuatorsの場合は次の日に投稿できましたが、NatureCommの場合は62日にもかかってしまいました)。
ざっとまとめると以下の5点です。
(1) Natureなどの論文誌は、ほとんどの論文(80%以上)はレビューワにレビューされることなくエディタによってリジェクトされます。このため率直に論文をエディタにアピールできるカバーレターが極めて重要になります。
(2) レビューワ レビューでもほとんど (私の経験では80%くらい)リジェクトされるので、研究の内容を良くするといった当然の努力はもちろんのこと, 感じの良いリバッタルレターを書く, 根拠なく他人の研究を否定的する変な研究者をカバーレターの段階で事前に削除する といった研究以外の部分での対策が必要になります。
(3)レビューワからアクセプトが出ても、その後にリジェクトされる可能性があります。レビューワからの修正依頼に対して、より全力で応える必要があります。
(4) 採択までの時間はとても長く(私の場合は2倍くらいに)なります。より一層 辛抱強くなる必要があります。
「うまく論文が書けない」と悩んでいませんか? 私は自信を持って言います、それは「才能がない」のではなく、「単に教わっていない」だけです。私は悩む研究者をどうに助けたくて、このwebサイトを立ち上げました。他の記事も見て頂ければ、「あなたを助けたい」という私の情熱を理解して頂けると確信しています。一緒にがんばりましょう、がんばり方を教えます。
・Nature系などのトップジャーナルの書き方を記事にまとめました。研究者として世界的に活躍したい方、この記事を見て下さい。多くの記事の要点をいっきに見れます。
論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]