Nature系, Science系, Cell系などのトップジャーナル論文の書くノウハウを教えます。
我々のようなネイティブスピーカではない科学者こそ、ここで説明する書き方のルールをより一層深く理解すべきなのです。
どう書くべきか、何を書くべきかといった、トップジャーナルへの採択に必要な基本とルールを網羅的に解説しました。最後まで読んで、最後までちゃんと理解してもらいたいです。
Natureなどのトップジャーナルだと採択率は6%程度しかありません。全ての研究者のトップ6%ではありません。自分の研究はNatureにふさわしいと確信している人達の中からトップ6%です。
この激烈な競争において、自分がやった事をただ書いただけの論文は、絶対に絶対に採択されません。私の成果は世界最高峰だという強いアピールが必要だというのをまず意識してください。
この記事では、こうした背景をもとに論文で何を書くべきなのかについて、私の持つ全ての技術を紹介します。
まず、タイトル、アブストに始まりカバーレターまでの個々のパーツの書き方を全て説明してあります。
論文のタイトルの書き方で1番重要なことは、「何をしたか」を書くのではなく、「何が発見したか」を書きます。もう一度言いますが「何をしたか」ではありません。
しかもNature, Science, Cellなどの論文などに採択されたいなら、その新しい発見の中に過去の結果からでは予想できない "驚き" が含まれている必要があります。この ”驚き” をタイトルの一番最初に持ってきて下さい。
ちなみに[私が過去に出したこの論文]では、過去の研究結果から想定していた値より極めて高い強度が出たため、タイトルの書き出しはultrahigh strengthにしました。
その他にもタイトルの書き方のコツが3つあります。それは...
(1) On the study ofとか、The investigation intoとか、The effect ofといった、具体的に意味を成さない一般的な言葉をタイトルに入れない。
(2) 他の似た研究と何が違うのか分かるようにする。
(3) 15 words以内にする。
の3つも意識しすれば大丈夫です。
もし論文のタイトルの書き方についてもっと知りたいなら、この記事を参考にして下さい。
論文のタイトルの書き方:Nature, Science, Cellへの道
タイトルは最も人の目に触れる機会が多いため、論文誌のエディターは特に重要視しています。以上の工夫ができていないなら、エディターから即リジェクトされると思ってください。
アブストの書き方、実はとても簡単です。Nature fomular(Nature式)のアブストのルールがNatureから公開されていて、これに沿って書くだけです。
以下の7項目に注目すればちょうどいいアブストラクトが200-300 wordsで書けます。
Nature式とは...
(1)1~2文で、基本的な紹介を、全ての分野の科学者が理解できるように記載する。
(2)2~3文で、研究のより詳細な背景を、関連分野の科学者が理解できるように記載する。
(3)1文で、この論文の研究が対象としている一般的な問題を明確に述べる。
(4)1文で、主要な結果を要約する。
(5)2~3文で、今回明らかになった主要な結果を、従来はどのように考えられていたかということと直接比較しながら説明する。
(6)1~2文で、結果をより一般的にどんな意味を成すのか説明する。
(7)2~3文で、全ての分野の科学者が容易に理解できるような、より広範な展望を記載する (アブストラクトにこうした展望が含まれることで、その論文の影響力が大きく増すと判断する場合)。
以上の順を強く意識しない限り、Natureに採択されることはほぼないという気持ちで書いて下さい。
例えNatureに投稿しなくても、このガイドラインに沿ればいいアブストラクトが書けるので、このガイドラインに沿って書くのを強くオススメします。
アブストの書き方をもっと知りたい方はこの記事を参考にして下さい。
Nature式のアブストラクトの書き方:Nature, Science, Cellへの道
またNature式を紹介しているNatureの直接のリンクは[これ]です。
論文のイントロで特に重要なのは3点、
(1) 幅広いトピックスがある中で、どうして自分の研究が重要なのか説明する。
(2) でもどんな問題があるせいで、いま研究が進まないのかを説明する。
(3) 最後に、Here, we…とか In this study, we…といった率直な表現で何を発見したのか言う。
以上の3点を書かないとまずリジェクトでしょう。イントロの役割を果たせていません。
品質向上のために他にも注意すべきことが3点、
(1)論文誌から読者を想定して、書き始めの内容を変更する事、
(2)研究分野の問題を具体的に書く事、
(3)イントロの最後のwe以降の文で、この論文での発見を1,2文で書く事です。
ポイントは以上の6点です。イントロの書き方の詳細を知りたい方は、この記事を参考にして下さい。
論文のイントロダクションの書き方:Nature, Science, Cellへの道
高インパクトファクターの論文の図では、単位面積あたりの情報量をあげる意識を持ちましょう。情報の密度を上げるには主に2つコツがあります。
(1)構成と配置による情報密度の向上: 掲載された時の図の大きさを考えて、余白をできるだけ少なくします。まず図が、1つのカラムを占有するタイプか、2つのカラムを占有するタイプかを決め、論文に図がどの大きさで掲載されるべきか決めます。このときできるだけ余白を少なくするように図の構成(配置や縦横比)を考えます。また、図の大きさを論文に記載されるであろうサイズにしたときに、図の文字のサイズが、論文の本文の文字のサイズと同じくらいになるようにしましょう。以上を意識しながら、配置と構成を工夫して、無駄を極力なくします。
(2)内容による情報密度の向上:自分の結果のどんな科学的な驚きがあるのか説明できるようにします。過去の結果と自分の結果を比較して「差」があると、自分の結果に「新規性・独創性」があると言えます。ただ新規性・独創性そのものに価値は全くありません。新規性・独創性の中に、過去の考察から予想できない科学的な驚きがあるからこそ価値があるのです。なので図から「驚き」を作り出すための内容だけを書きましょう。もし「驚き」を図から作れないなら、そもそもその図は書く必要ないかもしれません。
以上の2点を意識して、ベクトルデータとして保存します。以上が高インパクトの論文の図を書く重要なコツです。
もっと詳細に図の書き方を勉強したい方、この記事を見て下さい。
高インパクト論文のFigureの書き方
また、ベクトルデータの図を書けるフリーソフト(inkscape)を知りたいなら、この記事を見て下さい。
高インパクト論文の図の書き方,まずはここから: inkscapeを使おう
(1)高インパクトファクターでは、図と同様にグラフもベクトルデータで書くべきです。
ベクトルデータでグラフを書けるソフトとしてMatlabをオススメします。epsデータで保存するだけです。epsファイルでデータを保存しておけば、inkscapeで自由に修正可能なのも利点です。
(2)グラフのフォントはArialにしておきましょう。ベクトルデータなのでエディターは修正可能なのですが、よく見る普通のフォントなのでArialにしておけばどの論文誌でも大丈夫です。
(3)グラフを書くには読者の視点に立って考えて下さい。余白が多すぎて単位面積あたりの情報量が少なくならないように注意したり、グラフを実際の論文のサイズにしたときに文字の見やすさに支障がないくらいの文字サイズであることを確認しましょう。
(4)グラフを書くときに一番重要なことは、過去の研究結果と比較できるグラフを書くことです。過去の研究結果と、自分の研究結果とを比較すると、差分があるはずです。その差分こそが新規性・独創性に相当します。Natureなどのトップジャーナルにおいて、ただ単に新規性・独創性があるだけでは採択されません。その新規性に "驚き(インパクト)" が含まれなくてはいけないのです。つまり過去の結果から予想できない結果になっていなければなりません。この "驚き(インパクト)" が強調されるようにグラフの横軸と縦軸を決めましょう。
論文の内容で重要な "インパクト(=科学的な驚き)" についてもっと勉強したい方、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
グラフを書くmatlabのプログラムをこの記事にアップロードしました。自由に使って下さい。私はこのプログラムで書いたグラフでNature Communicationsに採択されました。
論文の図の書き方,まずはここから: inkscapeを使おう
キャプションの書き方は、意識して訓練しないと大間違いします。なぜなら、学生時代に教わるレポートのキャプションの書き方は、トップジャーナルにおいて極めて悪いキャプションだからです。
Nature式のキャプションは、まず最初に発見したこと(グラフで1番言いたいこと)を書き、それに続く文章はその言いたいことをサポートするための文章で、これだけは言っておかねばならない事を言い終わった瞬間にキャプションが終わるように書きます。
ちなみに一方で、学生のレポート構文では、横軸と縦軸は何で、どんなプロットなのか説明し、その後に考察を初めて、結論を書きます。つまり最初の文からだけでは何をしたのか想像できず、最後までキャプションを読み終わった時に初めて言いたいことが分かります。何が言いたいか分かるまで時間がかかるので、完成度が極めて低いキャプションといえます。
キャプションは一瞬で書く人の実力が分かる部分で、私は添削を依頼してきた人の書く力を測るとき、まずキャプションを見ます。
高インパクト論文のキャプションの書き方をもっと勉強したい方、この記事を見て下さい。
論文のキャプションの書き方: Nature, Science, Cellへの道
結論では...
(1) 何をしたのか
(2) どんな傾向を得たか
(3) その傾向が, 過去の研究結果と比べて何が違うか?
(4) その違いが, 研究成果の流れを俯瞰的に見たときいに, どれだけ驚きなのか?
(5) 今後どんなことが起こりそうか?
(6) 今後どんな研究が必要かを書きます。
英語だとテンプレは...
- In summary, we AAAAAA..
- From this, we found BBBBBB exhibited multiple surprising and unique phenomena.
- First, CCCCCC.
- Second, DDDDDD.
- Third, EEEEEE.
- FFFFFF.
- GGGGGG is a complex phenomenon involving HHHHHH....
A,B,C,D,E,F,Gを自分の内容に書き換えるだけです。
結論をアブストの内容をコピペしないで下さい。アブストは、論文の内容を簡潔にまとめた文です。一方で、結論は得られた結果が何を意味するのか考察する部分であって、決して「まとめ」を書く部分ではありません。気をつけて下さい。
高インパクト論文の結論の書き方の詳細をもっと勉強したい方、この記事を見た下さい。
論文の結論の書き方: Nature, Science, Cellへの道
NatureやScienceのようなトップジャーナルになると、ConclusionとReferencesの間にいくつか書かなくてはいけないセクションがあります。
もし初めてトップジャーナルに投稿するなら、書いたことがない内容なので混乱すると思います。
テンプレがあるので、この記事で紹介しておきます。コピペしてあなたの論文に合わせて、XXXXの部分の変更して下さい。一瞬で終わらせましょう。
Data availability
Details of the experiments are available within the article and the Supplementary Information. XXXXX can be found at the publicly available repository: https://github.com/XXXXX.
Acknowledgements
We gratefully acknowledge Prof. XXXXX and Prof. XXXXX for useful discussions. XXXXX acknowledges funding from XXXXX and XXXXX. XXXXX acknowledge support from XXXXX and XXXXX.
Author contributions
XXXXX provided the conception and design of the study.
XXXXX acquired data Analysis.
XXXXX interpreted the results.
XXXXX wrote the draft of the manuscript.
XXXXX provided the study materials, laboratory samples, instrumentation, computing resources, and other analysis tools.
XXXXX acquired the financial support.
XXXXX analyzed and interpreted the data, and revised the manuscript critically for important intellectual content.
XXXXX managed and coordinated responsibility for the research activity planning and execution.
Competing interests
The authors declare no competing interests.
もしそれぞれの役割を知りたかったら、この記事を見て下さい。
Data Availability, Acknowledgments, Author contribution, Competing interestsの書き方
論文と一緒に「カバーレター」という、いわば「推薦書のような書類」を論文誌に提出します。
トップジャーナルでは、ほぼ全ての原稿が研究者にレビューされるまでもなく、1週間以内にエディタによってリジェクトされます。
たとえ何億円かけた研究だったとしても、たとえ10年以上かけた研究だったとしても関係ありません。ほぼ全ての原稿がエディタによって投稿から1週間でリジェクトされます。
なので率直に論文の魅力をアピールできるカバーレターは、高インパクトファクターになるほど重要になるわけです。
カバーレターで書くべきことは...
1. 原稿と一緒に何を提出したのか
2. 原稿は、何が新しいのか、どんな波及効果があるか
3. 査読者として相応しいと思う人のリスト
4. 査読者として相応しくない人のリスト
5. 共著者の情報
特に2の部分が重要です。原稿の結果の魅力を率直に書きましょう。「何を発見したか」「何でこれが重要なのか」「何でこのジャーナルにふさわしいか」を0.5ページくらいで書けばいいです。
高インパクト論文のカバーレターの書き方をもっと勉強したい方、この記事を見た下さい。
論文のカバーレターの書き方: Nature, Science, Cellへの道
解説付きのカバーレターのテンプレートに興味がある方、ぜひこの記事からご使用を検討して下さい。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
投稿した原稿の80-90%程度がエディターによってリジェクトされるので、カバーレターの完成度は極めて重要だと紹介しました。ただ驚くべきことにレビューワーレビューでも80-90%の原稿がリジェクトされます。このため、自分の原稿の妥当性を主張するレブッタルレターも重要です。
以下に要点だけに絞ってざっとレブッタルレターの書き方を説明します。まずレブッタルレターはリプライコメントから作り始めます。
(1)リプライコメントを黒、自分のコメントを赤にして書きます
(2)リプライコメントの全てをレバッタルレターにコピーします。削ったり足したりしてはいけません
(3)タイトルと原稿のIDを書類の1番上に赤いフォントで書きます
(4)次にエディタとレビューワに対してレビューを感謝する言葉を書きます
(5)レビューワの総評に対して感謝する言葉をポジティブな表現で書きます
質問や要望には必ず、感謝 / 同意 / 考え / 修正 / 修正箇所の紹介の順に書いて答えましょう。
絶対に注意しておいて欲しいのは、例え正論でレビューワをねじ伏せても、レビューワからアクセプトをもらえるわけではないという点です。レビュワーの意見に同意しつつ自分の意見を言うこちで、双方の意見も正しいとなりながら、原稿を修正しましょう。
レブッタルレターは典型的な言い回しがあるので、詳細を勉強したい方はこの記事を見て下さい。
論文のレブッタルレターの書き方: Nature, Science, Cellへの道
次に架空のレビューレターを作ってみました。実例を踏まえてどう書くべきか見たい方、この記事を見て下さい。
論文のレブッタルレターの書き方(実例編): Nature, Science, Cellへの道
この記事は書き方のノウハウなので、何を書くべきかは書くべきではありません。それは分かった上で、「インパクト」だけは紹介させて下さい。
過去の研究結果と、自分の研究結果とを比較すると、差分があるはずです。その差分こそが新規性・独創性に相当します。Natureなどのトップジャーナルにおいて、ただ単に新規性・独創性があるだけでは採択されません。その新規性に "驚き(インパクト)" が含まれなくてはいけないのです。
私はインパクト、つまり科学者を「なるほど!」と驚かせるパターンは以下の4つしかないと思っていて、自分がどのインパクトに帰着させられそうか意識しながら論文を書くべきだと思います。
1. 現象の定義: 今まで定量的に扱われてこなかった現象を世界で初めて定量的に定義し、その現象が何に依存しているのかを世界で初めてモデル化したというインパクト。
2. 異分野との融合: 1つの分野で導かれた式に、別の分野から導かれた式を代入するための関係式を得ることで、ある量を別の分野から導かれた量で定量的に定義したというインパクト。
3. 微視的機構: 複雑な現象を構成する要素に分解し、その要素を理解することで、元の複雑な現象の機構に知見を与えたというインパクト。
4. 理想的な単純化 : 様々な外乱があるが、それらを抑えるか無視できるような系で初めて現れる現象を発見できたというインパクト。
自分の結果をトップジャーナルに掲載させるには、比較によってインパクトが強調されるように、軸を選んでグラフを書く必要があります。
論文の "インパクト" について詳細に勉強したい方、この記事を見て下さい。論文の核になる部分で、論文を書く上で一番難しく、一番重要な部分です。
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
論文執筆の基礎を書き込んである解説付きのテンプレートを作りました。
タイトルは何を基準に決めるべきか、アブストは何から順に書くべきか、キャプションはどう書くかなどの基本がコメントとして、そのテンプレートで解説してあります。
"型の基本" です。(1)全ての修士学生と博士学生と、(2)全ての研究員と、(3)論文の書き方をちゃんと教わった経験がない大学教員が対象の解説付きの論文テンプレートです。
解説付きテンプレートの紹介ページ
Nature論文に挑戦しませんか? トップジャーナルに採択されるための技術を書きました。
タイトルや結論など最高品質の論文を完成させるための知識と、その知識がどう論文に反映されているか実例を通して理解できます。
研究者として世界の頂点を目指したい方、ぜひこちらを参考にしてもらいたいです。
解説付きテンプレートの紹介ページ
採択率が6%程度の強烈な競争において、ただ自分がやったことを書いただけでは絶対にトップジャーナルに採択されません。
どこでアピールできるのか、どんなアピールなら許されるのか、私が知る技術の全てを書きました。これでトップジャーナルを目指す準備ができました。
我々のようなネイティブスピーカではない科学者こそ、ここで説明した書き方のルールをより一層深く理解し、型と基本に忠実であるべきです。
私は、わざわざwebサイトを見てまでいい論文を書きたいと思う、あなたのような科学者が好きです。一緒に世界を変える最高の論文を書きましょう。私はいつだってあなたを応援しています。ぜひ他の記事も読んでください。