Nature, Scienceといったトップジャーナルでも通用する図(figure)、何を意識しなきゃいけないか知りたいですか?
「情報の密度」をキーワードにして解説しました。トップジャーナルの論文の図を書く方、必読の内容です。
以下の点に気をつけることで。エディターやレビューワーに「えっ、このまま論文誌にのせても大丈夫じゃない?」と思わせる図を作りましょう。
論文を高品質にするために、単位面積あたりの情報量をあげましょう。図の情報の密度を上げるには2つのアプローチがあります。
(1)構成や配置による情報密度の向上と、
(2)内容による情報密度の向上があります。
しばしば分かりやすさが犠牲になるのですが、図は単位面積あたりの情報量を最大化する意識を持ちましょう。その意識こそ高インパクトのFigureを書くコツです。
(* ベクトルデータで図を書けるソフトを持ってます? 私はinkscapeをオススメ。詳しくはこの記事で)
論文の図の書き方,まずはここから:inkscapeを使おう
読者に何の情報を与えないので余白はなくしましょう。以下のような考え方で、できるだけ余白を小さくし、論文を高品質にしましょう。
論文の図はダブルカラム(2列)で書かれます。すると図は基本的に2パターンで掲載されることになります。
1つ目のパターンは1つのカラムを占有する図で、グラフが1つしかない場合がこれに相当します。このとき例えば細長い図にしてしまうと左右に余白ができてしまいます。1つのカラムを想定した図の場合、細長くしすぎないことです。
2つ目のパターンは2列とも使って横長に図を載せる場合です。複数の図やグラフを同時に掲載する場合がこれに相当します。この場合、例えば複数の図を載せたものの、それらの図が配置が悪いと余白が発生してしまいます。
余白は読者に何の情報も与えません。1つのカラムを占有するタイプか、2つのカラムを占有するタイプかを決め、論文に図がどのように掲載されるべきか決めます。このときできるだけ余白を少なくするように図の構成(配置や縦横比)を考えるべきです。
図の構成(配置や縦横比)が決まったら、それに合わせて文字サイズを調節します。
このとき、ベクトルデータで保存できるソフトを使うのをお勧めします。PythonやKaleidaGraphなどでもいいですが、私はこの記事でMatlabをお勧めしています。
論文のグラフの書き方, Matlabを使おう
Matlabで作ったデクトルデータをinkscapeで読み込み、inkscape上で文字のサイズを調整します。つまり、図の大きさを論文に記載されるであろうサイズにしたときに、図の文字のサイズが論文の本文の文字のサイズと同じくらいになるようにしましょう。
1つのFigureと別のFigureの文字サイズが、論文にしたときに同じ大きさになるようにしましょう。つまり、Figure間で見比べても文字サイズにばらつきがないようにしましょう。
また文字のフォントはArialにしておきましょう。Arialにして嫌がられることはありません。
次のグラフは「構成や配置による情報密度の向上」によってトップジャーナル用に作られた私の図([この論文]のFigure3)です。この図では1つのカラムの図を想定して、無意味な余白がないように4つのグラフを配置しました。そして図の文字サイズが本文の文字サイズとほぼ同じになるように作成しました。Matlabでグラフを書き、それをinkscapeで読み込むことでベクトルデータでグラフを完成させました。
Nature Communicationsのエディタはグラフの文字の大きさを変えておらず、ArialからNatureのホームスタイルのフォントに変えただけでした。私が作成した図の完成度が高かったのが分かります。
投稿時に「このまま掲載しても大丈夫だな」と思わせるような完成度の図を作りましょう。
配置や構成によって情報の密度を向上させるだけでなく、内容の向上による情報の密度を向上させる方法があります。次のグラフをご覧ください。これは「内容の情報密度の向上」によってトップジャーナル用に作った私の図です。[この論文]のFigure4です。
私のデータ(This workと書いてあるプロット)は黒の三角形の6プロットだけです。
それ以外の23, 36, 38, 39, 40, 42, 44, 46, 47のデータは全て過去に発表された論文の値です。これらと比較して、自分の結果がどう違うか論文で考察しました。
過去の結果と自分の結果を比較して、「差」があると自分の結果に「新規性・独創性」があると言えます。このように他のデータを載せる事で新規性と独創性を生み出します。
ただ新規性・独創性そのものに価値は全くありません。新規性・独創性の中に、過去の考察から予想できない科学的な驚きがあるからこそ価値があるのです。私は新規性・独創性の中にある驚きを「インパクト」と呼んでいます。
トップジャーナルにおいて、インパクトこそが情報として価値があります。このため、グラフとはインパクトを作り出すためにデザインされていないといけません。
すなわち、自分の実験結果をそのまま書いただけでは、そのグラフに価値がないのです。他の結果と比較して、何が驚きなのか説明できるグラフになっていないといけません。研究分野にもよるのですが個人的には、トップジャーナルの原稿に生データを掲載しようとしたり、実験系の図を載せようとしないほうがいいと思うのはこうした理由のためです。
もう一度言います、自分の結果をただ書くだけでは価値も生み出せません。「内容の情報密度の向上」のため、他の結果と比較し、どんな驚きがあるのか説明するための図を書きましょう。これが内容による情報密度の向上です。
もし "インパクト" について勉強したいからは、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
inkscapeの場合は「名前をつけて保存」でsvg形式で保存します。 (svgはベクトルデータのファイル形式です)
論文を投稿するときはsvgでなくてjpegやpngかもしれません、しかしトップジャーナルだと、アクセプトされた後にベクトルデータの投稿を求められるので、事前にsvgでも保存しておくといいです。
高インパクトファクターでは、科学的な価値のある図を載せる必要があります。ではどのように情報の密度を上げた図を書くか解説しました。
(1)構成や配置による情報密度の向上: 掲載された時の図の大きさを考えて、余白をできるだけ少なくする。
(2)内容による情報密度の向上: インパクトを生み出せるように、過去の研究結果と比較して自分の結果のどのような科学的な驚きがあるのか説明できるような図にする。
以上の2点を意識して、ベクトルデータで図を保存します。これが論文の図を高品質にするためのコツで、これが高インパクトのための図の書き方のコツです。トップジャーナルを目指す方、必ず意識して図を書いてもらいたいです。
論文が採択されず、落ち込んでいませんか?落ち込む必要なんてありません。大丈夫です。きっとうまくいきます。不安になるってことは、それだけ真剣に取り組んできた証拠です。そんな人がうまくいかないはずがありません。私はそんな真剣なあなたを本気でサポートします。大丈夫、きっとうまくいきます。
・次はキャプションの書き方です。ほとんどの研究者が致命的なミスしています。この記事で理解して下さい。
論文のキャプションの書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]