NatureやScienceなどのトップジャーナルの査読で、レビューワからアクセプトをもらいたいですか?
レビューワを説得するための書類であるレブッタルレターをどう書くのか、テンプレと共に紹介しました。
最高品質の論文誌に論文の掲載を目指している方は必読です。
この記事では、2人のレビューワから受けたレスポンスレターっぽいものを作ってみました。で、この自作のレスポンスレターからリバッタルレターを書いてみます。
つまりこの記事では、実際に何を書いてみたということです。
もしリバッタルレター作成するときの基本的な考え方を知りたいなら、この記事を参考にして下さい。
論文のリバッタルレターの書き方: Nature,Science,Cellへの道
以下がレスポンスレターの例です。このレスポンレターのレブッタルレターを作ってみます。レスポンスレターの内容は細かく読む必要はありません。典型的なreviewer2人の典型的な質問の仕方を勝手に私が作っただけです。実際のレスポンスレターはemailで送られてくるので、以下のようにテキストファイルで読むことになります。
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Reviewer#1
著者は新たなマイクロ粉砕機の開発し、これによって従来まで不可能だったマイクロスケールにスパイスを粉砕できるようにした。粉砕したスパイスは極めて辛く、ボン・カレーの20倍の辛さ、世界で最も辛いと言われるブート・チョロキアの70%に到達することを実証した。本結果はカレー以外への料理にも応用展開が期待できるので、今後多大な波及効果になると予想できる。このためこの原稿はNature Cookingsに相応しいと考えているが、掲載する前に下記に紹介するようにいくつかの心配を解決する必要があると考えている。
(1) マイクロスケールに粉砕すると辛くなるのは、粉砕によって表面積が増えたからと原稿に説明してあった。しかし、Dr. Gandhiは2005年に空気に接触して辛さが減衰する結果を得ている。またDr. Robuchonも2006年に同様の議論をしていて、彼は熱によるスパイスの酸化することで辛さが減衰していることを示している。Reviewerは表面積が増えたからという原因だけでなく、粉砕によって酸化していない面が新たに露出したから辛くなったと考えられないだろうか。表面積の増減だけで辛さの決定できるのか、例えば酸化現象のように表面積以外の効果が関係あるのか原稿で示す必要がある。
(2) 粉砕の際、スパイスの局所的に急激な温度上昇か圧力上昇が起こり、それによってスパイスが他の組成に変化している可能性はないだろうか? つまり、熱や圧力でスパイス自体が化学変化し、別のスパイスに変成していないだろうか。単純に粉砕しただけという前提が正しいのか不安になっている。もし変成が起こっていたら、表面積増加による辛さの増加のモデルが妥当でなくなると考えている。
(3) 本当にマイクロスケールに粉砕できているのだろうか? Dr. Wongらは1998年に別の原理で既にマイクロスケールに粉砕できる手法を開発していたのだが、粒径にバラつきが多くミリ単位の粉も多く見られている。著者らの粉砕手法がどの程度の精度で粉砕出来るているのか知りたい。
(4) 以下が誤字脱字です。著者らは修正すべきである。
- 本当みぃ高い圧力 page3 Line 21
- マイクロ粉砕機はせん断方向に page 4 Line5
- 最も辛い香辛料として知らるる page 7 Line20
Reviewer#2
著者らはマイクロ粉砕機の開発よってスパイスの辛さを調節できる手法を開発した。スパイスを節約したり、辛さの限界を越えるための手法として原稿で紹介した。しかし、この結果はNature Cookingsにふさわしくないと思う。単純にスパイスの量を増やせばこれらの目的は達成できると考えられるからである。
(1) 辛くなったと書いてあるが、カレーの作り方によるのではないか?
(2) Figure.3のy軸のラベルがうまく読めないので修正すべきである。
(3) 誤字脱字を直して下さい(Please check all typos in the manuscript.)
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以上のレスポンスレターから、テンプレを参考にして以下のレブッタルレターを作成してみました。レブッタルレターはwordファイルです。レスポンスレターはテキストなので、このテキストからwordファイルを作成して、そのファイルを提出することになります。
ちなみに、こんな感じのwordファイルを作ります。
Download RebuttalLetter.docx
wordファイルの内容をテキストにすると以下の通りになります。
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Point to Point Response to the Reviewers
NCookings ID: XXXXXX20220424A-Z
We sincerely appreciate the editor and reviewers’ valuable and insightful comments on our manuscript. We have revised and improved our manuscript as suggested. In the following, we provide a point-to-point response to every question raised. We have highlighted portions of the manuscript that have been updated in response to the reviewers’ comments.
Reviewer#1
著者は新たなマイクロ粉砕機の開発し、これによって従来まで不可能だったマイクロスケールにスパイスを粉砕できるようにした。粉砕したスパイスは極めて辛く、ボン・カレーの20倍の辛さ、世界で最も辛いと言われるブート・チョロキアの70%に到達することを実証した。本結果はカレー以外への料理にも応用展開が期待できるので、今後多大な波及効果になると予想できる。このためこの原稿はNature Cookingsに相応しいと考えているが、掲載する前に下記に紹介するようにいくつかの心配を解決する必要があると考えている。
Response: We thank the reviewer for these very positive comments on the work.
Issue1-1: マイクロスケールに粉砕すると辛くなるのは、粉砕によって表面積が増えたからと原稿に説明してあった。しかし、Dr. Gandhiは2005年に空気に接触して辛さが減衰する結果を得ている。またDr. Robuchonらも2006年に同様の議論をしていて、彼らは熱によるスパイスの酸化することで辛さが減衰していることを示している。Reviewerは表面積が増えたからという原因だけでなく、粉砕によって酸化していない面が新たに露出したから辛くなったと考えられないだろうか。表面積の増減だけで辛さの決定できるのか、例えば酸化現象のように表面積以外の効果が関係あるのか原稿で示す必要がある。
Response: We thank the reviewer for these comments. We completely agree that since we do not consider the effects of an oxidation, it is not appropriate to assume that the spiciness is determined only by the total surface area of the spice particles. XXXXXX. We modified that YYYYYY. These changes are highlighted and found on page 9 in the revised manuscript.
We also thank the reviewer for providing a comprehensive set of references. We were not aware of all of these advances. Note, as mentioned above, we intended to cite Dr. Gandhi, and also cited Dr. Robuchon.
Issue1-2: 粉砕の際、スパイスの局所的に急激な温度上昇か圧力上昇が起こり、それによってスパイスが他の組成に変化している可能性はないだろうか? Dr. Satoらは粉砕によって瞬間的に試料の温度が上がっている結果を出している。つまり、熱や圧力でスパイス自体が化学変化し、別のスパイスに変成していないだろうか。単純に粉砕しただけという前提が正しいのか不安になっている。もし変成が起こっていたら、表面積増加による辛さの増加のモデルが妥当でなくなると考えている。
Response: We thank the reviewer for these comments. We fully agree that we should have mentioned such effects in the manuscript. We performed additional experiment using EELS and EDX by TEM and found there is no such chemical reactions. We therefore wrote new supplementary document and mentioned the chemical reaction in the revised manuscript. These changes are highlighted and found on page 8 in the revised manuscript.
Issue1-3: 本当にマイクロスケールに粉砕できているのだろうか? Dr. Wongらは1998年に別の原理で既にマイクロスケールに粉砕できる手法を開発していたのだが、粒径にバラつきが多くミリ単位の粉も多く見られている。著者らの粉砕手法がどの程度の精度で粉砕出来るているのか知りたい。
Response: We thank the reviewer for these comments. We completely agree that since we are not referring to their results, it is not appropriate to describe the XXXXXX. YYYYYY. We modified that ZZZZZZ. These changes are highlighted and found on page 8 in the revised manuscript.
Issue1-4: 以下が誤字脱字です。著者らは修正すべきである。
- 本当みぃ高い圧力 page3 Line 21
- マイクロロ粉砕機はせん断方向に page 4 Line5
- 最も辛い香辛料として知らるる page 7 Line20
Response: We thank the reviewer for their careful review. We have corrected all of these errors, and reviewed the manuscript fully.
Reviewer#2
著者らはマイクロ粉砕機の開発よってスパイスの辛さを調節できる手法を開発した。スパイスを節約したり、辛さの限界を越えるための手法として原稿で紹介した。しかし、この結果はNature Cookingsにふさわしくないと思う。単純にスパイスの量を増やせばこれらの目的は達成できると考えられるからである。
Response: We thank the reviewer for very positive comments and their valuable feedback.
Since the spiciness increases exponentially with particle size, this is a novel results for a technology that makes possible what cannot be achieved by simply increasing the amount of spice.
Issue2-1: 辛くなったと書いてあるが、辛さはカレーの作り方によるのではないか?
Response: We thank the reviewer for the insightful comment. We completely agree with the reviewer’ comment that spiciness depends on the ingredients contained in the curry. We should have explained the definition of spiciness much more. The spiciness defined here is the amount of spiciness component detected by the measuring instrument, therefore it is a method of evaluation without subjective factors such as hot and sweet. In the revised manuscript, we additionally provided the detail on the fact that spiciness is the amount of measured spicy ingredients. These changes are highlighted and found on page 2 in the revised manuscript.
Issue2-2: Figure.3のy軸のラベルがうまく読めないので修正すべきである。
Response: We thank the reviewer for the comment. We fully agree with the pointing out the label. The unit of y-axis in Figure 3 is often used to evaluate the spiciness, however we do not mention the definition in the manuscript, which may cause confusion. We therefore modified the caption of Figure.3. These changes are highlighted and found on page 2 in the revised manuscript.
Issue2-3: 誤字脱字を直して下さい(Please check all typos in the manuscript.)
Response: We have carefully checked the manuscript to ensure there are no typos.
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以上がレブッタルレターの例です。この書類を、修正した原稿と共にレビューワに提出します。どうでしょうか、テンプレをコピペしてさっと作成しただけとは思えないですよね。
インパクトファクター5未満の論文誌のリプライコメント位なら私は1-3日でレブッタルレターを書き終えられます。テンプレをテンプレを勉強したいなら[過去の記事]をご覧ください。
過去の記事で説明していない部分に焦点を当てて8つポイントを説明します。
(1) それぞれの質問に対して私はIssueを用いてラベルにしました。同様の意味の単語として、ProblemやMatterでも良さそうですが私は絶対にIssueを使っています。Problemだと厄介な事件が起きていて、必ず解決しなくてはならない切迫感が出てしまうと感じています。問題ごとだらけの原稿のように見えてしまうので私は使っていません。逆にMatterだと”関心ごと”のような意味になり、レビューワのお願いを解決する意思がないような印象を与えてしまうと感じているのでMatterも使っていません。Issueなら議題と言っているだけで切迫感もなく、解決する意思を見せられているので私はそれぞれの質問に対してIssueを必ず使っています。
(2) Reviewer#1は極めて優秀なレビューワを想定しました。Reviewer#1は、何が新しいのか理解しているし、何が発見なのかも理解していて、応用についても言及してあります。原稿の良い部分を強調してくれているので、こうゆう場合はありがたくResponse: We thank the reviewer for these very positive comments on the work.と言いましょう。
(3) Issue1-1は原稿の核になる結論部分の妥当性を疑う質問で、Issue1-2は実験結果の妥当性を疑う質問です。Issue1-3は前提を疑う質問です。過去の様々な研究者の結果を参照しながら説明してあり、それぞれなかなか厳しそうな質問です。テンプレ通りに書けば割と良い雰囲気の返答ができているのが分かります。要は、(1.感謝) (2.同意) (3.自分なりの理解) (4.変更内容の説明) (5.変更箇所の指定)の5ステップで書くわけです。
(4) Issue1-4は原稿内のミスです。素直に認めて直しましょう。Response: We thank the reviewer for their careful review. We have corrected all of these errors, and reviewed the manuscript fully.と言って修正しておきましょう。
(5) Reviewer#2は日本人の典型的なダメ レビューワを想定しました。総評で原稿の採択に積極的でないことが分かります。このため、まずResponse: We thank the reviewer for very positive comments and their valuable feedback.と言います。「スパイスの量を足せばいい」とコメントを残してリジェクトをしようとしているので、オリジナリティがないと言いたいのかなと察します。しかし、驚いたことに後の質問Issue2-1からIssue2-3では、スパイスの量について関係ない質問ばかりです。こうゆう場合は仕方ないので、変則的でありますが総評部分で新規性や独自性をアピールするしかありません。
(6) Issue2-1はテンプレ通りに書きます。つまり(1.感謝) (2.同意) (3.自分なりの理解) (4.変更内容の説明) (5.変更箇所の指定)の5ステップで書きましょう。質問の内容がくだらないので、思わず攻撃的に反論してしまいそうです。ちゃんと原稿を読んでくれよと思いますが、感謝と同意を忘れずに書くのがポイントです。
(7) Issue2-2もテンプレ通りに書きます。え?グラフを読めていないのに原稿をリジェクトしようとしているの?と言いたくなりますが、ここは攻撃的な言葉を押さえて、(1.感謝) (2.同意) (3.自分なりの理解) (4.変更内容の説明) (5.変更箇所の指定)の5ステップで返答しましょう。
(8) よく最後にPlease check all typos in the manuscript.と書くレビューワがいるのですが、具体的に何を直せばいいのか分かりません。仕方ないのでResponse: We have carefully checked the manuscript to ensure there are no typos.と返せば問題ないです。伝統的にこの文言を最後の質問に入れる日本人レビューワが本当に多いのですが、全く意味を成さない質問なので書かない方が良いと思います。
高インパクトファクターの論文では、レビューワが80%程度の原稿をリジェクトするので、強いレブッタルレターを書く技術は論文採択のために必須です。良いレブッタルレターを書くのは非常に大変ですが、非常に良いテンプレがあるので必ず知っておきましょう。
研究者として生きていくと、必ずうまくいかない時期がある。もうダメだって思う時期が必ずくる。「でも絶対に大丈夫だよ」とか、「いつか必ずうまくいくよ」とか、そんな無責任な事を言いたくない。「がんばろうよ」と言われて、「じゃあがんばるか」と思える人には助けはいらないと思っている。本当に辛いと思っている人を、どうしたら勇気づけてあげられるだろうか。そんな人に少しでも前を向いてもらえるよう、私は一生懸命、自分の経験を書いて残している。
・ネイティブスピーカーより高いインパクトファクターの論文誌に論文を出すコツは、この記事を参考に。
ネイティブスピーカーより高インパクトの論文を書くコツ
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]