Nature, Science系の論文誌に論文を掲載させたいですか? トップジャーナルに論文を掲載させるには、論文を書く力が必要です。
ただ、インパクトファクターの低い論文誌に、どれだけ論文を掲載させてもなぜ書く力はつかない理由が3つあるので説明します。
ちなみに、具体的にトップジャーナルの書き方を知りたい方は、この記事を見て下さい。
論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道
Nature系の論文誌の査読者と、そうでない論文誌の査読者は、研究者としてのランクが全然違います。
低インパクトの論文誌の査読者はランクが低いとは言いません。しかし、トップジャーナルに掲載されたことがない研究者が、低インパクトファクターの論文誌では査読者としてあなたの原稿の査読に参加する可能性があります。
これは私の経験から導かれた主観ですけど、トップジャーナルに掲載させた経験がない研究者は、「科学の進歩とは何か (つまりインパクトとは何か)」を理解していない研究者が多いです。("インパクト"について知りたい方は、この記事を見て下さい)
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
その結果、(a)この文章の論理が通っていないとか、(b)この解析手法を使うべきではないとか、(c)この説明が不十分だとか、(d)何がオリジナルなのかといった、論文の詳細のあげ足を取るような指摘ばかりになる傾向があります。
低インパクトの論文誌では、科学の進歩(=インパクト)について議論されることは少なく、(a)-(d)のような不毛な争いに巻き込まれがちです。
(a)-(d)も重要なことではありますが、不毛な争いに巻き込まれない技術を身につけても、その技術はトップジャーナルの掲載にはほとんど活用できません。
(スポーツで例えるならば...... 2部リーグでは2部リーグでの戦い方があるため、2部リーグで長い間訓練してもトップリーグで通用する選手にはなれません。選手は早々にトップリーグに上がって、トップリーグで活躍するための技術を身につけるべきです)
論文は何百年の歴史があり、この中で効率よく成果を伝えるために独特の"型"が磨かれ続けてきました。
しかし、低インパクトの論文誌は、常に掲載する論文数を増やしたい状況にあります。また、オープンアクセスの論文誌ならば掲載料を取って利益をあげたいと思っています。このため低インパクトの論文ではルールが緩いため、その ”型”を学べる機会がないのです。例えば...
(1) 論文のタイトル: 長いサブタイトルをつけるのはダメ。タイトルは基本的に15 words以下にすべき。
(2) レブッタルレター: レビューワからのコメントは返し方のテンプレがある。論破してもアクセプトがもらえるわけではない。
(3) 図がダサい: 解像度は高くすべきだし、むしろベクトルデータにし、文字はエディタブル フォントにするべき。
低インパクトの論文はルールが緩いので、以上のような論文を書くうえで誰もが知っている常識にちゃんと従ってくれとレビューワは指摘できません。
さらに、レビューワはあくまで論文の考察内容が悪いからという体で原稿をリジェクトします。このためタイトルが論文ぽくないとか、図がダサいといった、科学っぽくないリジェクト理由を著者には伝えません。
なので低インパクトファクターの論文誌にいくら投稿しても、大切な論文執筆のための常識を知るチャンスがありません。高インパクトファクタにチャレンジした時に初めて、自分には論文の書き方が分からないと気がつくわけです。
私は、とあるオープンアクセスの論文誌に投稿された原稿の査読をしました。
その原稿はとても酷く、まず理論モデルがまるで意味を成していませんでした。他のレビューワも私と同じように意味が分からないと言っていました。
私はリジェクトの通知を出しました。しかし驚いたことにエディタから、リジェクトではなくてメジャーリビジョンにしてほしいと言われました。仕方ないので何度かメジャーリビジョンをしたのですが、私は見込みなしと判断して再度リジェクトの通知を出しました。
すると驚いたことにレビューワである私が、エディタに査読から外されてしまったのです。
低インパクトの論文誌は、常に掲載する論文数を増やしたい状況にあります。オープンアクセスの論文誌ならば掲載料を取って利益をあげたいと思っています。なので、変な論文でない限りできるだけ多くの論文を掲載させることで、儲けたいと思っていることが多いです。
このため低インパクトファクタの論文誌においてレビューワは、(a) 別の物理量に注目して考察し直すべきだとか、(b) 条件を少し変えてもう一度実験をし直すべきだとか、(c) 結論を変えるべきだといった、原稿をふるい落とすような強い指摘ができません。
これらはインパクトに直結する非常に重要な部分です。このため、低インパクトファクターの論文投稿では、これを知らないで何十年と研究者をやってる可能性があり、相手を説得させる技術が一生身につきません。
論文 "数" を増やしても、それは単に作業をし続けただけで、書く実力が身についたわけではありません。私は、論文を書くセミナーに100時間以上参加しているし、論文の書き方の本を10冊以上読むなどして、常に書き方を勉強しています。また、高いインパクトファクターの論文誌に採択された人が周りにいたら、その人にコツや苦労話なども聞くなどして、常に自分の書く技術を向上させようとしています。
1つ論文が採択されたら、次の論文はそれより高いインパクトファクターを目指すべきです。でないと一生進歩しなくなります。
・ベートーベンが何曲作ったか知っていますか?
・アインシュタインが何本論文を書いたか知っていますか?
・ガウディーがいくつ設計したのか知っていますか?
科学者は数の多さを求めてはいけません。
カンタンな論文誌にいくら論文を書いても成長はありません。
なぜなら...
(1)低インパクトファクターの論文誌では、査読者としてトップジャーナルに掲載させたことがない研究者が担当する可能性が高いです。このため、インパクトに関する議論よりあげ足を取るような議論ばかりになって成長がない。
(2)参入障壁を減らすため低インパクトの論文誌はルールを緩くするので、論文執筆のための "型" を勉強できない。
(3)論文の考察部分に関して強い指摘ができなくなるので、著者達は話し相手を説得させる技術が身につかない。
何万回ハイキングを繰り返してもエベレストに登れるようにはなりません。たとえ大変でも、高インパクトファクターの論文をちゃんと目指すべきです。それこそ研究者として、最も効率的で、最も成長できる姿勢に他なりません。
・Nature系などのトップジャーナルの書き方を記事にまとめました。研究者として世界的に活躍したい方、この記事を見て下さい。多くの記事の要点をいっきに見れます。
論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]