Nature, Scienceといったトップジャーナルに掲載させるためには、どのような研究に取り組むべきか知りたいですか?
トップジャーナルっぽい研究内容の特徴を紹介しました。これからトップジャーナルにチャレンジする方、必読の内容です。
ちなみに、解説付きの論文のテンプレートに興味ありますか? Nature Communicationsに採択された原稿に解説をつけたので、気になる方は[この記事]で検討してもらいたいです
いきなりですが、今回紹介するのはあくまでも目安です。
しかも研究とは、こうすれば必ず成功するといったタイプの仕事ではありません。だからあくまでも目安なわけです。
それを踏まえたうえで、トップジャーナルっぽい研究内容の特徴は...
(1) 読者に"驚き(インパクト)"を届ける。
(2) 読者に"気づき(メッセージ)"を届ける。
(3) 今ようやくできた,という"ドラマ性"を届ける。
の3つをできる論文がトップジャーナルっぽいです。
なので、これらをできそうな内容の研究に取り組むことが、Nature論文に掲載できそうな実験ということです。
では、それぞれ詳しく紹介します。
読者が論文を読んだときに、"驚く"内容でなければいけません。
驚かせるには、まず新規性と独創性が必要です。新規性と独創性とは、過去の研究結果と自分の研究結果を比較して、「差」があることです。差があれば新規性と独創性があると言えます。
ただ新規性や独創性そのものに価値はありません。新規性と独創性の中に、今までの結果から予想できない差があれば驚きます。ここでいう驚きのことを私はインパクトと呼び、インパクトがあればトップジャーナルにチャレンジする価値があります。
インパクトには...
(1)2つの分野を結びつけ、それぞれの分野に新しい知見を与えられそうであったり、
(2)未知の現象について新たな依存性を提示したことで、新しい視点からその未知の現象に対して微視的な機構をもう一度考察するきっかけを提案できそうだったり、
(3)特定の条件で突然現れた現象で、従来の式を修正するだけでは解釈できず、新たな効果を追加する必要がありそう、
...があります。トップジャーナルにチャレンジする予定なら、過去の結果と自分の結果とを比較し、こういった読者を驚かせる物語を作れそうな実験である必要があります。
"インパクト"をもっと具体的に知りたい方は、[この記事]を参考にしてもらいたいです。
読者が論文を読んだときに、"気づき"がある内容でなければいけません。
気づきとは「自分の研究結果がなければ引き起こってしまう誤りを指摘すること」です。
要は、「もしこの研究結果を知らずに従来の方法を使い続けたら、ある量は過大評価してしまい、また別のある量を過小評価し、さらに数倍以上も異なる予想値を見積もってしまう可能性があるといった警告」が "気づき"です。
読者に気づきを与えないといけないというのは、言い換えると広い研究者に影響を与える内容でないといけないということです。研究者でない人も影響が出るような内容である必要はありません、しかし、最低でも投稿した論文と同じような分野の研究者に警告を出す内容でなくてはいけません。
このように、トップジャーナルにチャレンジする予定なら、ただ単に驚いた結果を出すだけでなく、読者の行動や思考を変えさせる影響力がある物語を作れそうな実験である必要があります。
私はこの気づきのことをメッセージと呼んでいます。メッセージについてもっと知りたいからは、[この記事]を参考にしてもらいたいです。
読者が論文を読んだときに、「ついに来たな!」と思わせる内容でなければいけません。
「最新の研究である」:長年ずっと未解決の疑問が、今回ようやく理解できたという物語が作れそうな研究である必要があります。長年の疑問が最新の技術で解明できたといった、物語が論文の価値を上げるために重要だからです。長い歴史は読者の驚きを大きくしますし、また長年の疑問は多くの読者がいることの証と言えます。極めて古い結果や、ダビンチやガウスといった超有名人の名前を出していいと思います。
「流行の研究である」:流行りの研究で、みんな注目しているから、読者も読むべきという注目の集め方も必要です。流行の研究であるというアピールする方法は簡単で、5年くらい以内に掲載された論文をたくさん参照するだけでできます。またできるなら、参照する論文のインパクトファクターは高い方がいいです。
このように、トップジャーナルにチャレンジする予定なら、ただ単に波及効果の強そうで、驚きの結果を出せそうなだけでなく、なぜ読者が今この論文を読むべきなのかアピールできそうな実験である必要があります。
注意: ドラマ性、とても重要ですけど、論文で長々と書きすぎないようにしましょう。古い結果を不必要にたくさん参照してあったり、歴史の紆余曲折を全部解説してあると、まとまっていない文章とみなされます。文章量は、ほどほどに。
研究の難しいのは、論理的に考えれば誰もが必ずトップジャーナルに出せるような驚きの結果を出せるわけではないという点です。
「The importance of stupidity in scientific research」というタイトルの記事に科学の成果を出すことの難しさを説明した記事があります。[この外部リンク]からpdfを読めます、1ページだけです。
この記事に完全に同意します。科学的な発見をするには「これが正解なんだ」「こうすれば必ず正解が出るんだ」というアプローチが必ずしも成り立ちません。
要は、1〜3のトップジャーナルに掲載させるためのポイントは意識しながらも、それだけにこだわり過ぎない "愚かさ" が必要だということです。
Nature, Scienceといったトップジャーナルっぽい研究内容の特徴を紹介しました。
トップジャーナルを目指す研究は、
(1)読者が論文を読んだときに、過去の結果からは予想できない「驚き」を生み出せそうな研究で、
(2)単に驚いた結果を出すだけでなく、読者の「行動や思考を変えさせる影響力がある」物語を作れそうな研究で、
(3)なぜ読者が今この論文を読むべきなのかアピールできそうな研究のことです。
トップジャーナルに掲載させるためには、以上を満たす内容に取り組むと掲載の期待値が高くなります。
どうでしょうか、参考になったでしょうか? Nature系論文, Science系論文、書いていきましょう。このサイトでは、常に上を目指す研究者を一生懸命に応援していきます!!