Nature, Science, Cellといったトップジャーナルに掲載させるためには「メッセージ」が必須です。
この「メッセージ」とは、「知らないと、こんなことが起こるよ」と読者に警告を出すことです。
これを結論に書きます。アブストにも少し書いてもいいです。ただ2回書く場合、2回目はより具体的に書かなくてはいけません。
そもそも論文における「メッセージ」とは何でしょうか?それは簡単です。「知らないと、こんなことが起こるよ!」これがメッセージです。
もう少し具体的に言うと、メッセージとは「自分の研究結果がなければ引き起こってしまう誤りを指摘すること」です。
ファーストクラスの論文誌に論文を載せたいなら、未来に何の変化も引き起こせない論文を論文誌に掲載させようとしないで下さい。
この記事では2つ論文を紹介し、それぞれがどのようなメッセージを、どこに書いたか紹介することで、論文に「メッセージ」を書けるようになってもらおうと思います。
Natureに掲載された論文から紹介します。この論文では、球を平面に押し付けたとき、接触面にかかる応力を計算しました。ナノスケールになると接点にかかる応力を、もはや連続体モデルでは正しく計算できず、原子レベルの構造が応力分布に影響を与えているといった結論です。
これがその論文のリンクです
https://www.nature.com/articles/nature03700
この論文にメッセージは2つありました。2つとも論文の最後のパラグラフにあり,
1つ目のメッセージは「The above results have obvious implications for SPM experiments, suggesting that contact areas and yield stresses will be underestimated by continuum theory and that friction and contact stiffnesswill be overestimated. 」
「従来の計算方法では、接触面積と降伏応力を過大評価してしまい、摩擦力と接触箇所の硬さを過小評価してしまう」といっています。
2つ目のメッセージは「Work on quantifying these effects for complex rough surfaces is under way, and initial results show that the area may be more than twice that predicted using continuum mechanics.」
「接触面積が連続体力学で予測される面積の2倍以上になる可能性がある」といっています。
要は、もしこの研究結果を知らずに従来の方法を使い続けたら、ある量は過大評価してしまい、また別のある量を過小評価し、さらに2倍以上も異なる予想値を見積もってしまう可能性があるとメッセージを出したわけです。
このように、「メッセージ」とは自分の研究結果がなければ、引き起こってしまう誤りを指摘することです。
2つ目に紹介する論文は、私が書いた論文です。この論文では、数µmの梁を作成し、その剛性ばね定数を実験的に計測しました。実験値・解析値・数値解の値の3つを比較しました結果、それらの値は1%以内の誤差で一致したという結論です。
まず[これ]がその私が書いた論文です。
メッセージは結論の最後とアブストの最後の2つにあります。それぞれは同じ内容です。
まず「We have demonstrated macro-scaled model as Eq.(1) is valid at a few µ scale.」
それと「We demonstrate that the stiffness of a beam of a few µm can be accurately calculated from the macroscale analytical solution if the beam dimensions are known. 」です。
この論文のメッセージは、マクロスケールで用いられる材料力学ベースの硬さの計算方法が、数µmのスケールでも成り立つという結論です。
この論文では、過大評価してしまうとか、過小評価してしまうとか、何倍も違う結果になってしまうといった、予想外の結果でなかったため強いメッセージ性はありません。だからインパクトファクターも低い論文誌しか狙えませんでした。
しかし強いメッセージでなくても、マイクロスケールでもマクロスケールのように予想通り問題なく使えると言うのもメッセージになり得ます。
メッセージは結論に書きます。結論では例えば以下の順で書いてみてはいかがでしょうか?
In this study, we have developed that AAAA
, and demonstrated that BBBB.
From this, we found CCCC.
The result shows that DDDD.
・AAAAに、実験系の特徴(新規性)を書き、
・BBBBは実験内容を書き、
・CCCCは科学的な発見を書き、
・DDDDに「メッセージ」を書きます。
このテンプレに沿って結論を書くのをお勧めします。ちなみに結論の書き方についてはもっと知りたい方、この記事を見て下さい。
論文の結論の書き方: Nature, Science, Cellへの道
それと, アブストの最後の部分に少し「メッセージ」を書いても良いです。ただアブストと結論の両方に書く場合、アブストの内容を結論にコピペしてはいけません。論文ないで絶対に2回同じ文章を書いてはいけません。
もしアブストの部分でもメッセージを書いた場合、結論で書かれている部分のメッセージは、論文の内容を踏まえてアブストで書かれたメッセージよりもっと具体的な内容を記述しましょう。
トップジャーナルにおいて、「メッセージ」なしの原稿が掲載されることは絶対にないと思ってください。
「メッセージ」とは、「自分の研究結果がなければ引き起こってしまう誤りを指摘すること」です。未来に何の変化も引き起こせない論文に価値はないと考えるべきです。
この記事では、2つの論文をピックアップして、それぞれのメッセージを紹介しました。
overestimate, underestimate, twice that predicted using...などメッセージを言うためによく使う単語があるので、絶対に覚えておきましょう!
結論の最後らへんに、The result shows that ...からメッセージを書き始めるといいと思います。
アブストにも「メッセージ」を書いてもいいです。ただその場合は内容をコピペせず、2回目に書いた方はより具体的に書きましょう。
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論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道
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