Nature, Science, Cellといったトップジャーナルに掲載させるためには、具体的な「問題設定」が必須です。
この「問題設定」とはそもそも何か? どうすれば書けるか、この記事ではその書き方を説明しました。
トップジャーナルの論文を書く方, 1つ上のランクの論文誌にチャレンジしたい方、必読の内容です。
まず、論文における「問題設定」とは何でしょうか?
それは簡単です。「克服できていない事があるため、どのような望まぬ状態になっているか」これが問題設定です。
問題設定がちゃんとできていない論文は本当に読んでいて苦痛です。例えば、問題点が具体的になっていないのに会議が延々と続いていたらどう思いますか? 目的がわからない文章は読んでいる間、ずっと苦痛なんです。
問題設定ができていないと、高インパクトファクターの論文誌では「見たことない発見だが、これがどう応用されるか分からない」という典型的な文言でよくリジェクトされます。
問題設定が不十分だと
・どんな読者を想定して書かれた論文かわからなくなる
・この論文で何をしたか分かりづらくなる
・この論文でどんな科学的な発見をしたか不明確になる
・今後この分野がどうなるか分からなくなる
・何がこの研究分野の限界かわからない
論文の完成度が極端に低くなるのが分かりますよね、こんな論文は私なら即リジェクトです。
2箇所に書きます。アブストとイントロです。
1箇所目:アブストの「研究の基本的な紹介」「研究のより詳細な背景」の説明が終わった直後、最初から3〜6文目あたりに書きます。
・アブストはどこに何をどの順で書くか決まっています。Nature式のアブストの書き方がNatureから提示されているので、詳細はこの記事を見て下さい。
Nature式のアブストラクトの書き方: Nature, Science, Cellへの道
2箇所目:イントロの背景を説明をし終わった直後、イントロの7割が終わったあたりに書きます。
・イントロとは、(1) 幅広いトピックスがある中で、どうして自分の研究が重要なのか説明し、(2) でもどんな問題があるせいで、研究が進まないかを説明し、(3) 最後に、Here, we…とか In this study, we…といった率直な表現で何を発見したのか言う部分です。問題設定は(2)の部分です。もっと具体的な位置は、この記事を見て下さい。
論文のイントロダクションの書き方: Nature, Science, Cellへの道
役割は「論文の内容を明確にする」です。どうゆうことかというと...
論文を4つの要素にギュッとまとめると、「(a)今までどんな研究があるか」「(b)どんな問題があるか」「(c)それを解決した結果、何が分かったか」「(d)その発見が読者にどんな影響を及ぼすか」です。
「(b)どんな問題があるか」ががちゃんと書けていないと、「(c)それを解決した結果、...」が分かりづらくなります。すると「(d)その発見が読者にどんな影響を及ぼすか」も分かりずらくなる。要はドミノ倒し的に論文の主張が不明瞭になります。
「問題設定」は論文の趣旨を明確にします。「(c)」「(d)」を分かりやすく書けるよほどの自信がない限り、ノンネイティブの人間は問題設定を明確に書くべきです。これがほとんどの研究者が全くできていません。書くコツは次のとおりです。
何ができていないのか!? めちゃくちゃ意識してほしいのは、「もう1歩具体的に書く」ということです。本当にこれだけ、本当に注意して下さい。
「観察できないのが問題」とか「十分に明らかにされていないのが問題」といった問題設定をよく聞きます。こうゆうのは全然ダメです。ほぼ全員の研究者がこの失敗です。
「観察できないから問題」なのではなく、せめて「XXXXを観察できないから、YYYYできない問題がある」と言って下さい。「観察できない」ことはあなたの問題であって、論文の読者にとっての問題ではありません。
「観察できない」と言わずにもっと具体的に言いましょう。例えば「接触箇所を観察できないため、応力や歪みといった試料の寸法を知る必要がある物理量を得られないので、接点材料の機械的特性と摩擦係数の関係とを直接関連づけて考察できない問題がある」なんかはどうでしょうか。
これで具体的になりましたね。問題はできるだけ具体的に書きましょう。具体的に書くことで、後に論じる内容が何となく予想できるし、読者に届けられるメッセージも強力になります。
(もちろん、イントロで言ったこの問題設定が、この論文でちゃんと解決されていないとダメですよ)
・問題点は具体的に書く、これが一番重要。しかし、2番目と3番目に重要なこともあるので、これらも意識してもらいたいです。それは...
・(2番目)問題点を指摘するのに2文(Two sentences)以上書いてしまって、長すぎて読みづらい。長いと読者が興味をなくす。
・(3番目)具体的に書くのを意識しすぎると、対象とする読者の人数を極端に少なくしてしまう。
・具体的に書くことで文章の説得力は強くなります。しかし具体的を意識するあまり、読んで欲しい読者の人数を減らさないように意識しましょう。このバランスが重要です。
トップジャーナルにおいて、明確な「問題設定」なしなら原稿が掲載されないと思ってください。
論文における「問題設定」とは、「克服できていない事があるため、どのような望まぬ状態になっているか」についてです。
この記事では、ほとんどの研究者がちゃんと問題設定できていないことを指摘しました。
問題設定を書くべき場所は2箇所、アブストの「研究の基本的な紹介」「研究のより詳細な背景」の説明が終わった直後と、イントロの背景を説明をし終わった直後、イントロの7割が終わったあたりの2箇所です。
本当に注意して欲しいのは、「もう1歩具体的に書く」ことです。ほとんどの論文でこれができていません。
「観察されていない」「解明されていない」はあなたの問題であって、読者にとっての問題ではありません。読者目線の問題を、問題設定にしましょう。
具体的な問題設定は、論文の趣旨を明確にします。「問題設定」はトップジャーナルを書くうえで必須の項目です。読者目線、ちゃんと意識しましょう!
論文の書き方、ちゃんと教わりましたか?アメリカに拠点を移してようやく教わった私から言わせると、我流で書き方を見つけ出すスタイルは、何十年も時間を無駄にするだけ。私は「正しい努力の方法を知ってもらいたい」「このサイトの情報によって救われる研究者が必ずいる」ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、私はそうゆう気持ちで1つ1つ丁寧に記事を書いています。私はあなたが論文で大成功して、大喜びしてもらいたい。それこそが私の喜びです。
・問題設定が終わったら、次は「インパクト」の作成です。例え結果が独創的で新規性があっても、それだけでは何の価値もありません。独創性と新規性の中に "驚き" が含まれていなけれ無価値です。その "驚き" こそがインパクトです。インパクトは黙っていたら生まれません。頑張って作り出すものなのです。トップジャーナルにチャレンジするなら必須の「インパクト」の作り方、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]