Nature系, Science系, Cell系のトップジャーナルに論文を掲載させるためには、強い「ストーリー」が必須です。
論文には典型的な論理の流れがあり、自分の結果をどの順で、どのように説明するか "型" があります。私はこれを「ストーリー」と呼んでいます。
では具体的に何を書くか解説。必読です。
まず、論文における「ストーリー」とは何でしょうか?
私は簡潔に定義しました。「適切な "問題設定" によって、"インパクト" と "メッセージ" をより多くの研究者に伝えられる論理」これが論文としてあるべきストーリーです。
この記事で、「インパクト」「メッセージ」「問題設定」の3つポイントを紹介して、それぞれ具体的に何を書くのか紹介します。

高インパクトファクター論文は、読者に「インパクト(科学的な驚き)」を届けるために書かれていなければいけません。インパクトは論文の核になる部分で、一番読者に届けたい内容です。
自分の結果と、過去の結果とを比較して、差があるなら「新規性や独創性がある」と言えます。
そして、その新規性と独創性を用いた考察で、「なるほど!」と科学者を驚かせられれば、それがインパクトです。
「なるほど!」と強い納得感と驚きを生み出すインパクト(驚かせ方)には、基本的にはこの4パターンしかないと私は思っています。
その4つとは、
1. 現象の定義: 今まで定量的に扱われてこなかった現象を世界で初めて定量的に定義し、その現象が何に依存しているのかを世界で初めてモデル化できたというインパクト。
2. 異分野との融合: 1つの分野で導かれた式に、別の分野から導かれた式を代入するための関係式を得ることで、ある量を別の分野から導かれた量で定量的に定義できたというインパクト。
3. 微視的機構: 複雑な現象を構成する要素に分解し、その要素を理解することで、元の複雑な現象の機構に知見を与えたというインパクト。
4. 理想的な単純化 : 様々な外乱があるが、それらを抑えるか無視できるような系で初めて現れる現象を発見できたというインパクト。
インパクトについてもっと具体的に理解したい方、具体的にどこに書くのか理解したい方、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「インパクト」の作り方!
具体的に何本の論文と自分の結果を比較すればいいのかというと、具体的に何本という数字はありません。例えば、私のNature Communicationsの論文では、合計で69本の論文を参照しました。この中の33本の論文は、イントロとmethodの説明のために使われました。そして残りの36本の論文を、自分の結果と比較して何が違うのかを説明するために参照しました。つまり論文のインパクトを出すためだけに、36本もの論文を参照したわけです。
科学的な驚きは勝手に出てくるものではありません。がんばって作り出すものです。
過去の結果との比較からできた差が、どのタイプのインパクトを生み出すのか論文で話しましょう。

「メッセージ」も必須です。論文における「メッセージ」とは、「知らないと、こんなことが起こるよ」と定義できます。
もう少し具体的に言うと、メッセージとは「論文の研究結果を知らなければ引き起こってしまう誤りを予言すること」です。
例としてNatureに掲載された[この論文]を紹介します。この論文にメッセージは2つありました。
2つとも論文の最後のパラグラフにあり、1つ目のメッセージは「The above results have obvious implications for SPM experiments, suggesting that contact areas and yield stresses will be underestimated by continuum theory and that friction and contact stiffnesswill be overestimated. 」
「従来の計算方法では、接触面積と降伏応力を過大評価してしまい、摩擦力と接触箇所の硬さを過小評価してしまう」といっています。
2つ目のメッセージは「Work on quantifying these effects for complex rough surfaces is under way, and initial results show that the area may be more than twice that predicted using continuum mechanics.」
「接触面積が連続体力学で予測される面積の2倍以上になる可能性がある」といっています。
要は、もしこの研究結果を知らずに従来の方法を使い続けたら、ある量は過大評価してしまい、また別のある量を過小評価し、さらに2倍以上も異なる予想値を見積もってしまう可能性がある、とメッセージを出したわけです。
このようにメッセージとは、論文のインパクトを用いて、今後引き起こってしまう誤りを予言することです。高インパクトの論文では、単に自分の結果の独創性を描くだけでは不十分で、インパクトの結果として未来がどう変わりうるか予言しなくてはいけません。
もっと具体的に書けるようになりたい方は、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「メッセージ」の作り方!

実験結果からどうやってストーリーを作るのか考えてみましょう.
まず
(Step1)実験結果を得て,
(Step2)次に数値シミュレーションなどで現象を解釈します.
(Step3)そしてその解釈と過去の結果とを比較して, 自分の結果がどのような「インパクト」があるのか考えます.
(Step4)最後にインパクトが分かれば, そのインパクトを知らない世界線でどのような誤りが発生するか予言することで「メッセージ」を書くわけです.
では大したインパクトがないと思ったらどうするか?それは解析内容をいろいろ変えてみてインパクトとメッセージのあるストーリーを選択します。

インパクトとメッセージのあるストーリーを選択するとは どうゆうことかと言うと....
自分の結果に対して、どのような量で解析するか、どのような計算方法でシミュレートするか、どの画像を使うかなどなど解析の方法は無数にあるはずです。
すなわち「自分の結果に関して, できるだけ多くの解析方法を用いて解釈し, それぞれの解釈について過去の研究との比較することでインパクトとメッセージを作ってみます。それらの中で最も強いインパクトを持つ解析方法を論文に書き、それをイントロの工夫によってできるだけ多くの研究者に届ける論理を作る」これこそが高インパクト論文の内容を決めるプロセスです。
ストーリーを決める上で、解析方法を決めてからインパクトを探す作業を始めてはいけません。できるだけ多くの解析方法を試し、最もインパクトの出る解析方法を論文に書くべきです。ちゃんと読者を意識して論文を書きましょう。

研究結果から「インパクト」と「メッセージ」が生み出せたら、次はこれらをできるだけ多くの研究者に興味を持ってもらうよう、適切な「問題設定」を考えます。「問題設定」は特にイントロで強く現れます。
復習するとイントロでは、
(i)世界中には無数のトピックスがあり、その数あるトピックスの中からどうして自分の研究トピックスに注目すべきか説明します。
(ii)けれども誰にも解決できない問題があるせいで研究開発が進まない背景を紹介します。
(iii)その問題を解決して自分は新たな「インパクト」と「メッセージ」を発見したことを言います。
ここで意識してほしいのは「問題をもう1歩具体的に書く」ということです。
例えば「観察できないのが問題」とか「十分に明らかにされていないのが問題」といった問題設定をよく聞きますが、これはダメです。
「観察できないから問題」なのではなく、せめて「XXXXを観察できないから、YYYYできない問題がある」と言って下さい。「観察できない」ことはあなたの問題であって、論文の読者にとっての問題ではありません。
しかし具体的を意識するあまり、読んで欲しい読者の人数を減らさないように意識しましょう。このバランスが重要です。
このように「問題設定」とは、「この研究は結局何がしたいんだろう」と「自分の研究とどう関わるのかな」を、明確に読者に届けるための論理のことです。
インパクトとメッセージや、論文の読者にどう関係あるかを結びつける重要な情報です。もう一歩、具体的に書きましょう。
「問題設定」の書き方をもっと知りたい方、この記事を見て下さい。
Nature論文を書くために必須,「問題設定」の秘訣!
「イントロ」の書き方をもっと知りたい方、この記事を見て下さい。
論文のイントロダクションの書き方: Nature, Science, Cellへの道

(1)インパクト: 結論に書きます。アブストやカバーレターにも少し出てきますが、ちゃんと語り切るのは結論です。結論についてもっと具体的に知りたい方、この記事を参考に。
論文の結論の書き方: Nature, Science, Cellへの道
(2)メッセージ: 結論に書きます。アブストにも書けますが、文字数の関係から1,2文くらいしか書けません。
(3) 問題設定:イントロです。イントロの7割くらいが終わったあたりです。具体的に知りたい方、この記事を参考に。
論文のイントロダクションの書き方: Nature, Science, Cellへの道

トップジャーナルにおいて、「ストーリー」なしの原稿が掲載されることは絶対にありえないと思ってください。
論文における「ストーリー」とは何でしょうか? それは簡単です。「適切な "問題設定" によって、"インパクト" と "メッセージ" をより多くの研究者に伝えられる論理」これがストーリーです。
この記事では3つポイントを紹介して、それぞれがどのようなメッセージを出したのか紹介しました。
(1)まず強いインパクトです。自分の結果と、過去の結果とを比較して、何が違うのか見て、何かが違うなら新規性があると言えます。そしてその新規の結果に、過去の研究からは予想できない結果に驚きがあれば、それがインパクトです。
(2)次に論文の読者に強いメッセージを伝えないといけません. では論文におけるメッセージとは「自分の研究結果がなければ引き起こってしまう誤りを指摘すること」です.
(3)インパクトとメッセージをできるだけ多くの研究者に届けられるように問題を設定してイントロを書きます.
いろいろな解析方法を試してみて、それぞれの解釈が持つインパクトとメッセージを他の論文と比較しながら考え、最も強いインパクトとメッセージのある解析方法を採用してそれを論文を書くのです。これが強い論文のストーリーの作り方です
私は今まで本当に苦労して論文の書き方を体得しました。だからこそ、皆様には絶対に苦労をさせません。このwebサイトでは高インパクト論文の書き方について網羅的に解説しました。ぜひ他の記事も見ていただきたいです。
・Nature論文を書きたいですか? 論文の書き方の技術を網羅的に紹介しました。もしファーストクラスの論文誌に挑戦するなら、この記事を見て下さい。
論文の書き方: Nature, Science, Cellへの道
・Nature Communicationsに採択された原稿に、解説を付けたテンプレートを作りました。Webサイトの解説した内容が実際にどう論文に反映されたか実例を見ながら理解できます。研究者として上を目指したい方、ぜひ参考に。
論文の解説付きテンプレート、なぜ重要なのか?
・論文の書き方は教わりましたか? このWebサイトに書いてある高インパクト論文の書き方をスライドにして1つにまとめました。論文の "型" を自習する教材として最適です。ぜひ参考に。
高インパクト論文の書き方をどう自習するか? [結論:この解説付きスライドを読もう]